各務課長が「君の時間を十分ください」と言った結果
「まだ見ているでしょうか……」
お弁当箱を保冷バックにしまいながら、さりげなく小声で尋ねる。課長は「どうだろう」と小さく首を動かし辺りを見回した。
「なかなか諦めてくれなくて本当に困っていたんだ」
声をひそめてそう言った彼は、園田嬢の行動を話す。
お見合いをしてからこの一週間、執拗にデートに誘われていたという。大方父親から聞き出したのだろう、社用スマホへの電話をかけてきて、断っても断ってもしつこく諦めず、とうとう会社にまで押しかけて来たらしい。
「それはなんというか……大変でしたね」
「ああ……」
重い息と同時に吐き出された返事が、彼の苦悩を物語っていた。
どうにか励まそうと、少し悩んでから口を開く。
「よほど各務課長がタイプだったんでしょうね。さすがわが社の人気ナンバーワン!」
あえて明るく冗談めかしてみた。
すると彼が至近距離から顔をのぞき込んできた。
「妬いてくれてるの?」
「えっ! い……いえ、あのっ……ごめんなさいっ!」
盛大に慌てる私に、課長はフフッと笑う。
「冗談だよ。人気があるかはわからないけれど、好きな相手に好かれないと意味がないよな」
どこかせつなげな横顔に、胸がざわついた。
各務課長には片想いの相手がいるの?
カフェで園田嬢に『結婚も恋愛も社外で』と言っていたのを思い出す。きっと社外の人なのだ。
短い時間ながらも恋人役を務めたおかげで、会社では知りえない彼の姿を知れた。まるで自分が本物の恋人にでもなったかのような気までした。
きっと各務課長は、恋人をすごく大事にするんだろうなあ。
だけどそれは私じゃない。
そう考えた瞬間、胸の奥がツキンと痛んだ気がするけれど、その意味を深く掘り下げてはいけない気がする。
お弁当箱を保冷バックにしまいながら、さりげなく小声で尋ねる。課長は「どうだろう」と小さく首を動かし辺りを見回した。
「なかなか諦めてくれなくて本当に困っていたんだ」
声をひそめてそう言った彼は、園田嬢の行動を話す。
お見合いをしてからこの一週間、執拗にデートに誘われていたという。大方父親から聞き出したのだろう、社用スマホへの電話をかけてきて、断っても断ってもしつこく諦めず、とうとう会社にまで押しかけて来たらしい。
「それはなんというか……大変でしたね」
「ああ……」
重い息と同時に吐き出された返事が、彼の苦悩を物語っていた。
どうにか励まそうと、少し悩んでから口を開く。
「よほど各務課長がタイプだったんでしょうね。さすがわが社の人気ナンバーワン!」
あえて明るく冗談めかしてみた。
すると彼が至近距離から顔をのぞき込んできた。
「妬いてくれてるの?」
「えっ! い……いえ、あのっ……ごめんなさいっ!」
盛大に慌てる私に、課長はフフッと笑う。
「冗談だよ。人気があるかはわからないけれど、好きな相手に好かれないと意味がないよな」
どこかせつなげな横顔に、胸がざわついた。
各務課長には片想いの相手がいるの?
カフェで園田嬢に『結婚も恋愛も社外で』と言っていたのを思い出す。きっと社外の人なのだ。
短い時間ながらも恋人役を務めたおかげで、会社では知りえない彼の姿を知れた。まるで自分が本物の恋人にでもなったかのような気までした。
きっと各務課長は、恋人をすごく大事にするんだろうなあ。
だけどそれは私じゃない。
そう考えた瞬間、胸の奥がツキンと痛んだ気がするけれど、その意味を深く掘り下げてはいけない気がする。