大好きだった元彼と再会しましたが、私はもう結婚しています。

「だって、あんなにわかりやすいのに、なんで千紘さんは気づかないのかって、みんな、ずっと不思議だったんだから。最近はむしろ、みんなで『部長かわいそ……健気……』って見守ってたくらいよ」

 なにそれ。本当に、なにそれ!
 私が呆然としていると、篠田さんはくすっと笑った。

「仕事は完璧、性格も優しい上司でしょう? そんな人がずっと一途に想ってる相手がいるなんて知ったら、応援したくなるものよ。しかも相手が千紘さんなら、それはなおさら」
「……ありがとうございます」

 なんだろう。複雑だけど、離婚のことで心配されていた頃を思うと、恥ずかしいのに嬉しい部分もある。

 でも、スキップしそうだったという部分だけはどう考えても恥ずかしい。

 っていうか、私たち、まだ肌も重ねていないのに。どうも結婚したくらいの盛り上がりだ。

 そんなわけで、私たちが付き合いはじめた、という噂は、開発部から社内全体へ、まるで暴風みたいに一瞬で広がっていった。

< 120 / 209 >

この作品をシェア

pagetop