大好きだった元彼と再会しましたが、私はもう結婚しています。

 その夜、自宅に戻ってきた穂高の頬には痛々しい拳の跡が残っていた。

「……ごめん、本当にごめんね」

 冷たいタオルを押し当てながら、私は何度も謝っていた。
 しかし穂高は笑いながら首を横に振った。

「むしろよかった。殴られでもしないと刑も軽くなるだろうしね」
「穂高……ごめん」
「謝るよりキスしてよ。そっちの方が治りが早いと思うよ」
「なにそれ」

 私がクスッと笑うと、穂高も微笑む。
 視線が合えば、どちらからともなくゆっくり唇が重なった。

 彼はいつだって私が安心できるように言葉を選んでくれる。安心できる場所になってくれる。

 穂高といられてよかった。
 私一人じゃ乗り越えられないことを、彼となら乗り越えられる。

 きっとこれからも、ずっと……。

 ――そしてその時の私は、当たり前に、これからも穂高とずっと一緒にいられるものだと思っていたのだ。
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