大好きだった元彼と再会しましたが、私はもう結婚しています。
お風呂から上がって寝室に入ると、先に湯から出ていた匡輔は、すでにベッドで寝息を立てていた。
その枕元で、匡輔のスマホがブルッと小さく震える。
何気なく視線が吸い寄せられる。
画面に浮かんだ名前と内容を見て、頭が冷たくなった。
【美晴:今日も楽しかったです〜!】
【美晴:いつもごちそうさま♡】
【美晴:最近食事の後は私の家ばかりだから、次は一泊で旅行でもしたいですね♡】
(……え? ちょっと待って、どういう意味?)
頭が一瞬で真っ白になる。今日は接待じゃなかったの?
――接待だから仕方ないだろ!
さっき本人が言っていた。
でも、美晴さんの言葉も脳裏をよぎる。
――私の彼氏ね、私のことは大好きで結婚したいんだけど、しつこい女にまとわりつかれててなかなか結婚してくれないんです~。
――私これからデートなんです〜!
背筋がぞわりと震える。
まとわりついてなんかいないが、美晴さんと彼がなかなか結婚できないのも筋は通る。
「……嘘でしょ。違うよね……?」
声に出してみても、心は全然落ち着かない。
もちろん顔見知りなのは知っていたけど、まさか、美晴さんと匡輔が付き合っているなんて――。
そんなはずない。そんなはず……。
でも、『今日も』は? 『私の家ばかり』って? 『旅行』って……?
接待の席で偶然同席しただけ、では説明がつかない。
いつのまにか指先が震えていた。
気付けば私はそっとスマホを伏せ、匡輔の枕の横に戻した。
何も見ていない、知らない、そう思い込もうとする。
でも、布団に潜っても心臓が落ち着かず、何度も寝返りを打った。
まぶたを閉じても、さっきのメッセージの文字が焼きついて消えない。
結局、一睡もできないまま朝が来てしまった。