大好きだった元彼と再会しましたが、私はもう結婚しています。

 ウエイターから渡されたワインを一気にあおると、脚がほんのり浮いたような感覚になる。会場の外に出て、ソファに座り込んだ。

 ――その時だ。

「大丈夫ですか?」

 ふいに低い声が降ってきた。

「……すみません、少し飲みすぎただけです。すぐ平気になります」

 ゆっくり顔を上げた時、息が止まる。

「ほ……穂高⁉」
「やっぱり千紘か」

 その声音は昔のままで、少しやせたが見た目もあまり変わっていない。むしろ、年齢を重ねた分、落ち着きが出て余計な角が落ちた感じがする。
 さらに、日本で見ると、百八十六の長身と、黒髪に端整な顔立ちはやたらと目立つ。私の脳が一瞬で学生時代に巻き戻った。

「え、ど、どうしてここに……?」
「どうしてって……うちのパーティだし」
「うちって……うちって⁉」

 彼は顔をクシャっとさせて、「同じこと二度言ってるぞ」と笑った。

 なに、どういうこと……?

 私の勤務先である『フォレスティア飲料』がうちってことだろうけど……。そんなの聞いたことはなかった。

 そこへ、会場から瑞穂社長がひょっこり顔を出す。

「千紘さん、やっぱりここにいた。あ、穂高まで一緒だったの?」

 でもなんで瑞穂社長がその名を呼んでるの?
 私は混乱して「え」とか「へ」とかしか言えなかった。

 瑞穂社長は、愉快そうに彼を指さす。
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