大好きだった元彼と再会しましたが、私はもう結婚しています。

「こちらが私の弟の穂高。かなり年が離れてるでしょう? 今回の就任で、無理言って呼び戻したの。役職つけようとしたら本人に全力で拒否られたけど……私の後任の開発部長になるからね」
「ぶ、部長……? いや、それより弟さん、名字違いますよね?」
「両親が離婚しててね。穂高は母の姓なのよ」

「すみません、私、帰ります!」

 私はわけのわからないまま立ち上がった。が、足がふらついた。

「千紘!」

 穂高が素早く腕をつかんだ。温かい掌に触れられただけで、血が一気に顔に集中して顔が熱くなる。

「穂高、危ないからタクシーまで送ってあげて」
「あぁ」
「で、でも——」

 私は断ろうと瑞穂社長を見る。すると彼女は目を細めて口を開いた。

「今から、私が人生初の言葉を発するわよ」
「え?」
「これは『社長命令』ね。ってことで、よろしく~」
「えぇぇ……!」

 初めての社長命令がこんなことでいいのか。
 しかも、瑞穂社長はニコニコしていて、逃げ道がない。

(困る。非常に困るんですけど……!)

 瑞穂社長は知らないだろうけど……この人は
 私がアメリカ留学中に出会い、恋をして、大切で、大好きで……。

 でもうまくいかなくて、別れた元カレだったのだから。

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