大好きだった元彼と再会しましたが、私はもう結婚しています。

 ただ、彼女にとっての俺は、好きな人であると同時に、生まれて最初に見た親鳥みたいな……そんな存在だったんだろう。

 大好きで、ずっと一緒にいたくて、離れたくない――その気持ちが誰よりも強かった。

 日本から離れた土地という場所柄もある。どちらかが帰国したら、もう会えない。
 そんな可能性のある場所で、俺たちは一緒にいたのだから。

 確かに、彼女の留学費用は大学もちで、帰国の日は刻一刻と近づいていた。

 彼女が俺と一緒にいる方法は……日本に帰らず、このままアメリカで一緒に暮らすこと。
 それには、結婚してしまうのが一番確実だ。そうすれば、俺の職場も配偶者として彼女をここに置いておけるから。
 だけど、あの頃の俺には、結婚をして、研究もできない環境に彼女を縛り付ける覚悟がなかった。

 ……いや、もちろん一生一緒にいたいとは思っていたよ。

 でも、彼女がここに結婚して残れたとしても、彼女のやりたい仕事や研究はできない。

 そして俺は俺で、不仲な両親が不仲なまま、本当にギリギリの段階まで結婚生活を続けた姿を見てきたせいで、『結婚』という手段にいい印象が持ってなかった。

 対して、彼女ははっきりと結婚という形を望んでいた。彼女は、「本当に好きなら結婚したいと思うはずだ」と主張した。

 どうやら彼女の両親は心底愛し合っていて、父親の事故という形で彼女の母親はシングルマザーになったが、その後も母親は父親を愛し続けているらしい。
 自分もそんな人に会えたのだ、と思ってくれていたようだ。


 ――結婚して、ずっと一緒にいたい。

 そう決意してプロポーズしてくれた彼女に、俺は言ってしまった。

 ――結婚しなくても一緒にいられるはずだ。と。
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