大好きだった元彼と再会しましたが、私はもう結婚しています。
後日、羽柴法律事務所に行くと、明るくて綺麗なあかり先生が迎えてくれた。
「証拠、すっごいたくさん集めましたね。よくここまで頑張りました。あとは私に全部任せてください! 千紘さんが涙を流した分、倍以上にしてきっちり法律で取り返しましょう!」
その言葉に、ずっと張りつめていた何かがふっと抜けて涙がまた出た。
そこからは、あかり先生が主導して手続きはトントン進んだ。
まずは内容証明郵便で通告。
匡輔が逆ギレしてきたため、家庭裁判所での離婚調停をすることになった。
匡輔は『俺は悪くない』『ただの遊びだ』『こちらだって我慢していた』と責任転嫁ばかりで、ついには『千紘は家事だってろくにできてなかった。嫁の責任を果たせてなかった』と言い出す。
彼の言い分も通るんだろうと思ったら、調停員は淡々としていた。
あかり先生も、『否のある側ほど、自己正当化に走りますからね。そういうのは調停員も慣れているわけです。またこのパターンね、って感じで納得してます。あなたの研究と同じ、調停員もプロなんです。安心してくださいね』と余裕の表情で笑っていた。
確かにそうだった。
不貞行為の写真や動画、文章、美晴さんのSNS……すべての証拠が整っていたのもあり、結果、離婚調停は成立した。
不貞慰謝料は匡輔・美晴双方から。今後匡輔が支払うべき婚姻費用の清算、財産分与、引っ越し費用の一部負担まで、すべてがきっちり決まった。
さらに追い打ちをかけるように、社内では匡輔が美晴とのホテル代を経費で申請していたことが発覚した。もちろん経費は通っていなかったが、そんな申請をしたという事実だけで十分に問題視された。
『そもそも、不倫していたと決定した社員を本社に置いておく理由はない』……瑞穂社長の判断は容赦がなかった。
匡輔には、地図を見ても一瞬では場所が分からないような海外工場への異動辞令。美晴さんも、地方の工場への異動が決まった。
しかし、二人がそこに移動することはなかった。
離婚が決まってからほどなくして、二人はともに会社にいづらくなり、退職していったからだ。