大好きだった元彼と再会しましたが、私はもう結婚しています。
目覚めると、部屋は静かで、私は一人で……。
だけど、その静けさは不思議と心地いい。
以前のように、匡輔のためにご飯を作り、帰宅時間を気にして胃を痛め、家の中を気を遣いながら動く必要もない。
(自由って……こういうことなんだ)
そう思うたび、涙が出そうになった。
匡輔のことは、今でも時々思い出す。
夕方、駅前の居酒屋を見ると「接待だ」と言って遅くなっていた彼が。嗅いだことのある香水の匂いがすれ違うと、夜中に帰ってきた彼の背中が脳裏をかすめる。
だけど、もう胸は痛まなかった。
(……きっと、あの人はあの人で幸せにやってるんだろう)
皮肉じゃない。本気で、そう思っていた。
私は私の生活を取り戻して、自分の気持ちを大切にできる世界に戻ったことが幸せだった。