大好きだった元彼と再会しましたが、私はもう結婚しています。

 自分の浮ついた気持ちを悟られないように、私はねぎまにかじりついた。

(お! これも、おいしい……!)

「そうやっておいしそうに食べる顔、間近で見るの久しぶりで……俺も嬉しい」

 彼はそう呟くなり、ハッとしたような表情をして、「あ、いや……飲み物は?」と言った。

「じゃあ、ウーロン茶で」
「了解」

(えっと……さっきのは、どういう意味?)

 頭の中で動揺が渦を巻く。
 プライベートな意味で嬉しいってことだろうか。好きだから? いや、まさか。そんなはずない。

 勘違いしちゃダメだ。

 そもそも私には離婚歴がある。そのドロドロした顛末も、全部穂高には知られてしまっている。
 だかこそ、今更恋愛感情を彼が私に抱くはずがない。

 穂高はきっといつか彼に似合う素敵な女性と付き合うのだろう。それが当たり前だ。

 いや、もう付き合っててもおかしくない。

 ……穂高に彼女、か。

 そう思うと胸がズキン、と痛む。

 なんで傷ついてるの。それすらおかしいだろう、と自分を戒めた。
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