大好きだった元彼と再会しましたが、私はもう結婚しています。

「俺はね、元々この会社にくるのはかなり悩んでたんだ。父親についてはあまりいい思い出はなくてね。でも……ある女性がいるって分かってここに来た。来てよかったよ。会社を見ていたら、前より少しは父親のことがわかったし、なにより、元気のなかったその女性も元気になったのを近くで見守れたから。だから、俺はここにきてよかったと思ってる」

 そう言って、ふいにテーブルの下の自分の手が、大きな温かいものに包まれる。穂高に手をつながれたのだ。

「っ……!」

 ひゅっと心臓が一気に跳ね上がる。
 昔はもっとすごいこともしていた相手なのに、今や手を繋ぐだけで息さえ苦しくなる。

 振り払うことも、何もできず固まってしまった。
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