辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る
帝国へ向かう道中、
ドノヴァン侯は冷たく言い放つ。
「そういえば……アズールティアの若造から、手紙が来ているらしいな」

ファティマは驚き、
思わず手を握りしめる。
「何も疾しいことはありません。あれはただの――」

「ふん。たまには、お前でも良いかと思っていたが……心ここにあらずの女など要らん」

侯爵の手が伸び、彼女の腕を掴む。
「やめてください!」

ファティマは鋭い声で拒絶した。

その瞬間、
侯爵の表情は怒りと屈辱に歪む。
「……覚えておけ。お前は侯国の女だ。俺に恥をかかせるようなことは死んでもするなよ」

2人の関係は完全に冷え切っていた。
それと同時に、
こんな男のためにどうして私が
ここまで身を粉にして働かなければならないのか
という怒りの感情を
ファティマに抱かせたのだった。
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