俺様御曹司はパイロットになって愛しい彼女を迎えに来る
「そうなのね。ソーニャという人はどんな方なの?」

「大きな銀行の頭取の娘で、会社の融資なんかでもお世話になっているらしい。日本に行く前に婚約者にと言われた時にきっぱり断ったんだ。俺には心に決めた人がいるから彼女の隣にいるために日本に行くんだとも言ったのに肝心な所はスルーされてるし、どうなってるか明日親父や母さんにきちんと話を聞いてみる。俺はNOAを辞めるつもりはないし空を諦めるつもりもない」

「隼人」

そう言うと空は隼人に抱き着いた。隼人も空をぎゅっと抱きしめて”ごめんな、空”と何度も言って、空を膝の上にのせてキスを落とした。

キスはだんだん深くなっていきもう二人は止められなかった。近くの寝室のベッドに倒れ込んで、時間を忘れて愛を確かめ合った。

気が付くともう夜になっていた。空のお腹がキュルキュルと可愛い音を出したので、空は恥かしくてベッドの中で隼人に抱き着いて掛け布団を頭からかぶってしまった。

“可愛いな、空は”そう言うと隼人は声を出して笑った。

「さあ、食事に行くぞ。空のお腹はもう限界みたいだからな、シャワーを浴びて準備して」

隼人はもう一つの寝室のバスルームにシャワーを浴びに行った。

空もさっさとシャワーを浴びてお出かけできる服を着た。どんな所に行くつもりかはわからないがドレスコードに引っかからないようにきちんとした服を用意してきたので、あまり着ない色だがサーモンピンクのワンピースにアイボリーのカシミアのコートを羽織った。

このコートは去年隼人がロンドン便に乗務の後2泊のステイがあった時に買って来てくれた物だ。

軽くてあったかくて色もアイボリーで何にでも合わせられて空の大のお気に入りなのだ。

これを着ていれば下に半袖のTシャツでも平気なのだ。ここはカナダなのでマフラーと皮の手袋も装着して、夜のバンクーバーの寒さもどんとこいだ。

そしてこのマフラーと皮の手袋も隼人からの去年のクリスマスの贈り物だ。

日本ではまだ少しマフラーや手袋も早いけれど十一月のバンクーバーなら丁度良い。

隼人からの温かい贈り物を身に着けて、心も体も温かい空だった。
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