俺様御曹司はパイロットになって愛しい彼女を迎えに来る
それから、ホテルに着くまで車の中では話もしなかった。

バンクーバーゴードンホテルに着くと隼人はフロントで名前を名乗っただけでキーを貰うと部屋に向かった。

予想していた事だがスイートルームだった。まあ当然だろうゴードンホテル&リゾーツの御曹司なのだから…

空は大きなため息をつきそうになって、それを飲み込んで明るい声で

「わあ~、すごい。私スイートルームなんて初めて泊まるわ。広いね、寝室も二つあって広いバスルームもそれぞれの部屋についてるよ」

部屋を見て回ってそう言った。窓からは遠くに山を近くには湖が見える。ホテルはとても風光明媚な場所にある。

置いてある家具もどっしりとした多分本物のアンテイークの家具だろうローテーブルやコンソールなどが置かれ室内は豪華で気品に満ちている。

同じ雰囲気のダイニングテーブルも、バーカウンターもある。

空は興味津々であちこち視線をやって落ち着かない。

「空、ごめんな。嫌な気分にしてしまってグランマは気位が高くて俺の嫁さんはカナダ人でないと認めないようなことをずっと言っていたんだ。グランマの伴侶は日本人だったんだが、これが素行が悪くギャンブルや賭けゴルフに嵌まってついに会社の金に手を付けて、追い出されたんだ。今ではどこにいるかもわからない。だから日本人に良い感情を持っていないんだ。その後はグランマが社長としてやってきたんだ。母さんの兄が亡くなってしまって親父が後を繋いだんだけど、親父も最初は苦労してた。母さんも必死で支えていたんだ。親父の手腕で業績が上を向いてきてやっと認められたんだ」

「そうなの。でもグランマってすごい人だね」

「うん、そうだな。俺はこちらでパイロットとして航空会社に就職して会社を継ぐつもりもなかったのに、グランマはカナダ人の奥さんを貰って会社を継ぐようにうるさく言い始めたんだ。親父も母さんも俺の好きにしろと言ってくれるのに、家族の血が大切なんだろうなあ。そんなの今の時代にそぐわないから、社内や社外から優秀な人を社長に据えてやっていくべきなんだ。親父もそう思ってる。退任するまでにはそんな会社にしてみせると言っていたんだ。でもグランマは頑として認めなくてとにかく四十五歳くらいまでは自由にしていいという所で折れたんだが…」

そう言うと隼人はソファーに座って、はーっと心底疲れたと言うように溜息をついた。
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