天下無双なヴァンパイアは番を探し続ける
1章

プロローグ

「ごめんね……夜翔(よると)

弱々しく、すぐに消えそうな声が白い殺風景の病室に響いた。
病室の中のベットの上で一人の女の子が横たわっていた。
その顔には、まったく血の気がなく、真っ青だった。

「お願いだ…っ」

その隣には銀髪の男の子がいる。

「でも、自分を責めないで……。っ……夜翔と過ごした日々は、すっごく楽しかった」

夜翔と呼ばれた少年は「っ……そんなこと言わないでくれ……」と言った。
その頬に一筋、涙が流れる。

その様子を見た少女──凛夜(りんよ)は、ずきりと心が痛くなる。

(自分のせいだ……。夜翔を悲しませて、その心に傷を残してしまう……)

「必ず探しに行く。待ってろ」

凛夜の心を読んだかのように、夜翔は揺るぎのない決心を表しているように強い声で言う。
凛夜の瞳から涙が溢れた。

「うん。待ってる。私もあなたに会いに行くね……」

──それが、凛夜の最期の言葉だった。
凛夜はその名前のように、静かに、はかなげなく、命の火を消した。
その横顔はまるで眠っているようで、起きそうなのに、凛夜はもう起きないのだ。

「っ〜〜──……!」

それを理解したとたん、夜翔は声にならない叫びを出していた。病室の中でその声が木霊するも、誰も答える人はいなかった──


◇◇◇◇◇◇


影牙(かけが)学院のボスの存在である、神牙夜翔(しんがよると)は最愛の番がいなくなってから暴れるようになった。夜翔が一旦暴れ出すと、気が済むまで誰も手をつけれなかった。

「違う牙族とぶつかれば、必ず勝つ」
いつの間にか、そう噂され、いつしか彼はこう呼ばれるようになる。

「天下無双」

だが、どれだけ暴れても、一人だという孤独感が和らぐことはなかった。

──あの日、番の月咲凛夜(つきさきりんよ)がいなくなってから、心に穴が空いたようだった。それでも、唯一心の支えだったのは、最後に交わした約束だった。

『必ず探しに行く。待ってろ』その言葉に凛夜はしっかりとうなずいた光景は今でも新鮮に蘇ることができる。あの約束だけが、彼を生かしていると言っても多言ではない。

そして、夜翔が暴れる時は、治安や犯罪を犯している悪い牙族を倒すためと、凛夜の生まれ変わりを探すためだった。
──つまり、彼は牙族だけでなく、暴走族の仕切りをしていたのだ。凛夜が安全に生きれるように。

そのことを知っている人はいない。
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