天下無双なヴァンパイアは番を探し続ける

4 平穏な学校生活

翌日──
朝、教室の前で立ち止まる。

あれから一晩中考えてた。いや、考えたくなくても勝手に脳内で神牙さんが再生される。
『俺に関わるな』ってあの顔。あの目。あの声。

寝不足でクマできてない? って自分の顔をスマホのインカメで確認してから、深呼吸して教室の扉を開ける。

「よし……平凡、平凡……平凡な生活、いける……っ」

思った。本当に、思ってた。
のに、現実は甘くなかった。

クラスの席が貼り出された掲示板で、自分の名前を見つけたとき、思わず二度見してしまった。

【一年A組 白城沙音】
……そして、そのすぐ下に。

【一年A組 神牙夜翔】

(え? ちょっと待って、今見間違えた? 私、寝不足だし、名前が幻覚になって──)

いや、なってない。間違いなく同じクラス。

(……あーーーーー最悪だぁああああ……!!)

心の中で思いっきり叫んだ。顔には出さない様にしたけど、口角は引きつってたかもしれない。

教室に入った瞬間、なるべく教室の端を歩いて、自分の席に着いた。
──後ろの席に彼が座っているかとかは、見ない。絶対に見ない。目が合う可能性があるとか無理。人生の終わり。

あんな宣言された後に同じクラスとか、神様のイジメかな? それとも運命の皮肉?
……運命? いやいや、そんなドラマチックなものじゃない。多分ただの不運。

「白城さんだよね? 隣の席の影森です」
「えっ、あ、はい……よろしくお願いします……!」

必死に笑顔で応じながらも、視界の端に彼の存在を感じる気がして、思わず背筋を丸める。

見るな。見たら終わる。目が合ったら石になる。
自分に言い聞かせながら、思った。まるで現代のメドゥーサみたいだ、と。

……それにしても、なんで急にケンカを売られたみたいになったんだろう。

勝手に図書室に入ったから? でも、入室禁止って書いてなかったし……。

ほんの少しだけ、気になってしまう自分がいた。
この気持ちが、気まずいだけなのか、それとも違う気持ちなのかはわからない。
それに、昨日の胸の痛みにも気になる……。

いやいやいやいや、だとしてもダメ! 気になったら関わるフラグ!

──なのに。

気配が近づいてくる。背中に刺さるような視線。空気が変わる。

まさか……まさか──

「……お前、ほんとに俺を無視する気か?」

低く、聞き覚えのある声が背後からした。

(ぎゃああああああああああ!!!! 『関わるな』じゃなかったの!?)

心の中で叫んだ。外には出さない。絶対に。

──私の、平凡な学園生活、まだ一歩も始まってない。
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