私は死亡者
沙耶がそこまで言った時、急に廊下の奥の影が動いた。

細長い影。
人の形。

音もなく近づいてくる。

「沙耶、後ろ!」

叫んだ瞬間、電気が一斉にバチンと消えた。

闇の中で、何かが私たちに向かって歩いてくる。

生者とも死者ともつかない気配を纏って——。
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