私は死亡者

二つの足跡

遼からのメッセージは一通だけだった。
電話をかけても繋がらず、位置情報も取得できない。

知らせるだけ知らせて、遼は再び闇に消えたのだ。

私は深く息をつき、沙耶に視線を向ける。

「沙耶、お願い。
あの夜……私が倒れていた場所へ連れて行って」

沙耶は驚いた顔をしたが、私の目を見て、観念したようにうなずいた。

「……わかった。でも、危険よ」

夜が深まった道路は静かで、どこか薄気味悪い。
街灯の光が落ちる交差点へ近づくと、沙耶が足を止めた。
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