私は死亡者
角を曲がった瞬間、私は固まった。

廊下に、私がいた。

もう一人の——私。

髪の長さも、顔も、声さえ同じ。
ただひとつ違ったのは、その“目”。

光を反射しない、深い闇のような瞳。

その“私”は遼の白衣を掴み、壁に押し付けていた。

「遼……。
あなたは真実に近づきすぎた」

遼の目がこちらを向く。

「……美鈴……!
そっちは……本物だ……!」

もう一人の“美鈴”がゆっくり振り向いた。
< 59 / 95 >

この作品をシェア

pagetop