私は死亡者

偽りの私

沙耶が遼を引き寄せ、こちらへ逃げ込ませる。

“偽りの私”がゆっくり歩み寄ってくる。

「あなたが死んだ夜、覚えてる?」

私は唇を噛んだ。

「覚えてない……
でも断片が……刺された記憶が……」

「そう。あなたは抵抗した。
だから手間取ったの」

手間取った?
殺すのに?

私は怒りが込み上げる。

「なんで私を殺したの?
あなたは何者なの?」

偽りの私は、優しく微笑む。
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