私は死亡者

「ええ。
私には“生きた人生”が必要だった。
あなたの世界、あなたの関係、あなたの未来——
全部欲しかったから」

沙耶が怒りに震える。

「最低!!」

偽りの私が静かに呟いた。

「だから私は遺体を影に引き渡した。
魂が残れば、あなたは“存在してしまう”から。
影が回収すれば、あなたは完全に消えたはずだった。
なのに……」

私を指さす。

「あなたは“残った”。
死んでいるのに、生きることを諦めなかったから」
< 63 / 95 >

この作品をシェア

pagetop