私は死亡者
「遼は“死者の魂に触れられる特殊な人間”。
だからあなたを抱くことができた。
普通の人には不可能なのに」

私は愕然とする。

遼は——
私が死んでいた瞬間、
魂だけになった私に触れられた。

だから遺体ではなく“私”を感じていた。

偽りの私が一歩近づく。

「でも、もう終わりにしましょう。
あなたの人生は私が受け取る」

私は後退りながら叫ぶ。

「嫌!!
私は……まだ終わってない!!
死者でも、生者でも、あなたの影でもない!!
私は“私”として存在する!!」

偽りの私が笑う。

「なら——証明してみせて?」

そして、病院の蛍光灯が次々と割れ、
辺りは闇に包まれた。
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