私は死亡者
「ええ。本物のふりをしたもの」

「じゃあ……あれは……」

遼の声が震える。

「俺は……“本物”の美鈴を抱き締めながら、
お前の声を聞いていたのか……?」

偽りの私が微笑む。

「ええ。
そしてあなたは……“本物”の死を見届けた」

遼が膝をつく。

「そんな……そんな……」

私は遼に駆け寄った。

「遼……大丈夫……?」

しかし遼は首を振る。

「違う……違うんだ美鈴……
俺は……あの夜、助けられなかった……
俺が……」

偽りの私が言う。
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