私は死亡者
胸には刺し傷。
血の痕はもう乾いていた。

私は震えた。

「これが……私……」

未鈴はそっと言った。

「あなたの魂が拒んだ肉体。
でも戻りたがっている。
感じる?」

私は遺体に近づき、手を伸ばした。

その瞬間、影の声が深淵に響く。

『肉体へ戻れば、未鈴は存在できない』

私は息を呑む。
未鈴を見る。

未鈴は……微笑んだ。
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