私は死亡者
ふと——後ろから微かな風が吹く。

“ありがとう”

そんな声が、確かに聞こえた。

未鈴の声だ。

私は振り返り、静かに呟いた。

「未鈴……
あなたの名前は私が覚えてる。
消えてなんかいないよ」

朝日が差し込み、影が伸びる。

その影の端に——
ほんの一瞬だけ、未鈴が笑った姿が見えた。

私は微笑む。

「ずっと、一緒に生きるよ。あなたと」
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