双子王子の継母になりまして ~嫌われ悪女ですが、そんなことより義息子たちが可愛すぎて困ります~4

1、恋心の自覚とそれぞれの変化


『悪魔(ディアブル)の黒髪』として家族に虐げられていた私が、国王陛下の再婚相手に抜(ばっ)擢(てき)されて一年が過ぎた頃。

 夏が来て、成婚一周年のパーティを開こうとルイゾン様は提案してくださったが、再婚の場合はあまり派手な行事をしないという慣例の壁は厚く、さすがのルイゾン様も諦めざるを得なかった。前王妃シャルロット様のご実家が強く反対したらしい。

 正直、助かったと思った。

 ルイゾン様の気持ちはありがたいし、奔走してくださったのに叶わなかったのは申し訳ないのだが……我ながら本当に最近おかしいのだ。

 人知れず――ルイゾン様へのドキドキが止まらない。

 以前からふたりきりになると緊張して固まっていたが、これほどではなかった。今は、他に人がいる場でも、不意打ちでチラリと姿が見えるだけで固まってしまう。

 原因はわかっている。

 ルイゾン様に対する気持ちを自覚したからだ。

 そう、契約結婚で、お飾りの王妃で、王子たちのお世話係になるために再婚相手に抜擢されたのに、本気でルイゾン様のことを好きになってしまった。

 直接のきっかけは、数カ月前。ルイゾン様の異母兄、プレソール王兄殿下が特殊能力『隠蔽』を使って私を拉致した時のことだ。

 王兄殿下に首を絞められた私は力を振り絞って抵抗しようとしたが逃れられず、諦めかけたその瞬間、ルイゾン様が助けに来てくれた。二度と会えないかもしれないとまで思っていたのに、また会えたことが、抱きしめてもらえたことが、どうしようもなく嬉しくて、もう、自分に嘘はつけないと気付いた。ルイゾン様が好き。大好き。離れたくない。

 そう思った途端、挙動不審に拍車がかかり、今に至る。

 だって仕方ない!

 優しくて誠実で、常にいたわりの気持ちを持ってくださって、だけど誰よりも強くて、魔獣が出たと聞いたら真っ先に討伐し、並行して国内外の情勢に目を配り、すべての采配を見事にやってのける。

 なにより、双子王子たちのことを、最優先で考えている。

 ――そんな方、好きになるに決まっている!

 そもそも、ルイゾン様を好きじゃない人なんていない。だから、仕方ない。仕方ないけど、挙動不審になるのは困る。

 手っ取り早い対策は顔を合わせないようにすることだろうが、思い切りの悪い私はそれもできない。

 自分の立場をよくわかっているからだ。

 ルイゾン様はとても優しいけれど、所詮は契約結婚。本気で王妃にしたい方が現れたら身を引かなくてはいけない。

 その覚悟は常にしている。

 だけど、だからこそ、今一緒にいる時間を大事にしたいのだ。

 ――なんて欲張りなのかしら。

 今も、同じベッドの端に眠るルイゾン様の寝顔を見たいようで見られなくて、背中を向けて固まっている。

 ルイゾン様より先に目が覚めた時はいつもこうだ。

 眠る時はまだいい。暗闇だから、それほど顔も見えないし、おやすみなさいと挨拶して目を閉じればすぐに夢の中だ。ドキドキする暇もない。多少はするけど。

 でも、朝は不意打ちすぎる。

 目覚めてすぐに、ルイゾン様の整った顔が目に入るのだ。

 心臓に悪すぎて、慌てて寝返りを打って、背中を向けて――もう一度だけその寝顔を見たい誘惑と葛藤する。

 起こさないようにゆっくりと振り返れば、ルイゾン様が金髪を朝日に煌(きら)めかせて眠っているところが見られるのだ。見ても誰にも咎められない。

 ――でも、見られない! 絶対、心臓破裂する!

 今朝もその調子で、いや、いつも以上にひとりベッドの端で悶えていた。

 というのも、昨日までルイゾン様は魔獣の討伐に出かけていて留守だったのだ。

 つまり久しぶりのルイゾン様。

 毎日会っていてもドキドキするのに、久しぶりとなるとさらにドキドキする。さすがの私も昨夜は眠れないかと思うくらい緊張した。いつの間にかぐっすり寝ていたようだけれど。

 そんなわけで、今朝の目覚めはさらに悩ましい。

 ルイゾン様に背中を向けながらも、どのタイミングで起きようか悶々と考える。

 ――どうしよう。どうやって起きようかしら。やっぱり自然に挨拶して起きるべきよね。でも自然って? なにをやっても不自然になる予感しかないわ。

「おはよう、ジュリア」

「――ひゃっ!」

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