双子王子の継母になりまして ~嫌われ悪女ですが、そんなことより義息子たちが可愛すぎて困ります~4
悩んでいるうちに、いつの間にか起きていたルイゾン様にあっさり声をかけられた。それだけで、体中が甘い痺れに包まれるようだ。
なにもかも見透かされているような気がして恥ずかしくなり、深呼吸してから振り返る。
「おは、おはようございます。ルイゾン様。昨日はよく眠れました?」
顔が赤くなっていないことを祈りながらそう言うと、ルイゾン様は微笑んだ。
「ああ。よく寝た。やはりこのベッドじゃなきゃ寝た気にならないね」
――ど、どういう意味かしら! いいえ、意味なんてないわよね。慣れた場所が一番。そういうことだわ。
「よ、よく眠れたならなによりです」
「朝からジュリアにも会えるしね」
――!?
私はひゅっと息を呑んでから必死で自分に言い聞かせる。
――落ち着くのよ、落ち着きなさい、ジュリア。きっと言葉通りの意味だわ。だけどそろそろ心臓が限界かも。
内心の大嵐を宥めようとしていたら、ルイゾン様が言った。
「支度をして食堂に行こうか」
「はい!」
勢いよく起き上がると、自分の黒髪がさらりと揺れるのがわかった。
髪色が魔力の系統を表すこの国では、ほとんどの人が攻撃魔法の赤系か、防御魔法の茶系の髪色をしている。
例外は三つだけ。
私の『悪魔の黒髪』と、ルイゾン様の『王族の金髪』。
そして双子の王子たち――ロベールとマルセルの銀髪だ。
数は少ないものの、金髪と黒髪は稀に現れる。
だが、史実を紐解いても、この国で確認された銀髪はロベールとマルセルだけだ。
ふたりとも、生まれた直後は金髪だったが、出産後、侍医の目の前であっという間に銀髪に変化していったそうだ。
生母であるシャルロット様がその時お亡くなりになったことや、前例のない銀髪であること、双子は不幸を呼ぶという迷信から、ロベールとマルセルのお世話係はなかなか定着しなかった。
ルイゾン様が金髪の特殊能力、『観察眼』を駆使して、私を王子たちの継母に抜(ばっ)擢(てき)したのはそんな経緯からだった。
魔力の多寡や、能力の有無、明らかな悪意、向き不向きなどがわかる『観察眼』だが、ルイゾン様曰く万能ではないそうだ。本人が善だと思い込んでいればすり抜ける可能性があるからだが、それでも巧みに使いこなせているのがルイゾン様だ。
ちなみに黒髪にも特殊能力があり、私の場合は『予知』だ。
悪夢とセットになって夢の形で現れるため、自分ではコントロールできないのだが、一度だけ成功し、フルー川の氾濫を抑えられた。
予知のコントロールは、それ以後はうまくいっていない。特殊能力は鍛えることができるので焦ることはないとルイゾン様は言ってくれているが、できればもっと精度を上げたいと日々努力している。
――ルイゾン様のようにきちんと活用できるようになりたい。
そんなことを考えながら着替えを済ませた私は、再びルイゾン様と合流し、食堂に向かった。
「父上! 母上! おはようございます!」
「おはようございますっ! 父上、母上っ」
先に席に着いていたロベールとマルセルに迎えられ、私とルイゾン様は微笑みを返す。
「ああ、おはよう、ロベール、マルセル」
「ふたりともおはよう」
ロベールとマルセルは、いつも以上にキラキラした瞳をルイゾン様に向けた。
「父上、えんせいおつかれさまです」
「ごぶじでなによりです」
ロベールとマルセルにとっても久しぶりのルイゾン様との朝食だ。
見るからに嬉しそうで、胸が温かくなる。
ルイゾン様は笑みを深めながら席に着いた。
「ほう、もうそんなことが言えるのか。ありがとう。疲れが吹っ飛んだよ」
ふたりは前のめりになって答える。
「ふっとんでよかったです!」
「もっともっとふっとばします!」
――か、かわいい。今日も天使だわ。
五歳になって半年以上過ぎたロベールとマルセルは、相変わらずのかわいらしさで私を悶えさせた。
眉上と襟足で切り揃えられた銀髪は今日もサラサラと揺れ、ルイゾン様とそっくりの青い瞳が輝いている。
同じ服装を好むのも変わっておらず、今日もお揃いのシャツに、半ズボンと長靴下姿だ。
だが、この一年でかなり背が伸び、どんどん服が小さくなっている。
胸やお腹はまだ子どもらしい丸みがあるけれど、手足が長くなったのか、全体的にすらっとした印象になった。
――日に日に大きくなるわ。
ルイゾン様の隣の席で、私は朝日より眩しいふたりに目を細める。
「ふたりとも元気にしていたか?」
ルイゾン様が淹れたてのお茶を手にしながら、ふたりに尋ねた。
「はい! 元気にしていました!」
「わたしもとっても元気です!」
「うん。それが一番だ。最近なにかいいことはあったかな? なにが楽しい?」
ロベールが嬉しそうに答える。
「いいこと、これからあります!」
「ほう? なにがあるんだ?」
なにもかも見透かされているような気がして恥ずかしくなり、深呼吸してから振り返る。
「おは、おはようございます。ルイゾン様。昨日はよく眠れました?」
顔が赤くなっていないことを祈りながらそう言うと、ルイゾン様は微笑んだ。
「ああ。よく寝た。やはりこのベッドじゃなきゃ寝た気にならないね」
――ど、どういう意味かしら! いいえ、意味なんてないわよね。慣れた場所が一番。そういうことだわ。
「よ、よく眠れたならなによりです」
「朝からジュリアにも会えるしね」
――!?
私はひゅっと息を呑んでから必死で自分に言い聞かせる。
――落ち着くのよ、落ち着きなさい、ジュリア。きっと言葉通りの意味だわ。だけどそろそろ心臓が限界かも。
内心の大嵐を宥めようとしていたら、ルイゾン様が言った。
「支度をして食堂に行こうか」
「はい!」
勢いよく起き上がると、自分の黒髪がさらりと揺れるのがわかった。
髪色が魔力の系統を表すこの国では、ほとんどの人が攻撃魔法の赤系か、防御魔法の茶系の髪色をしている。
例外は三つだけ。
私の『悪魔の黒髪』と、ルイゾン様の『王族の金髪』。
そして双子の王子たち――ロベールとマルセルの銀髪だ。
数は少ないものの、金髪と黒髪は稀に現れる。
だが、史実を紐解いても、この国で確認された銀髪はロベールとマルセルだけだ。
ふたりとも、生まれた直後は金髪だったが、出産後、侍医の目の前であっという間に銀髪に変化していったそうだ。
生母であるシャルロット様がその時お亡くなりになったことや、前例のない銀髪であること、双子は不幸を呼ぶという迷信から、ロベールとマルセルのお世話係はなかなか定着しなかった。
ルイゾン様が金髪の特殊能力、『観察眼』を駆使して、私を王子たちの継母に抜(ばっ)擢(てき)したのはそんな経緯からだった。
魔力の多寡や、能力の有無、明らかな悪意、向き不向きなどがわかる『観察眼』だが、ルイゾン様曰く万能ではないそうだ。本人が善だと思い込んでいればすり抜ける可能性があるからだが、それでも巧みに使いこなせているのがルイゾン様だ。
ちなみに黒髪にも特殊能力があり、私の場合は『予知』だ。
悪夢とセットになって夢の形で現れるため、自分ではコントロールできないのだが、一度だけ成功し、フルー川の氾濫を抑えられた。
予知のコントロールは、それ以後はうまくいっていない。特殊能力は鍛えることができるので焦ることはないとルイゾン様は言ってくれているが、できればもっと精度を上げたいと日々努力している。
――ルイゾン様のようにきちんと活用できるようになりたい。
そんなことを考えながら着替えを済ませた私は、再びルイゾン様と合流し、食堂に向かった。
「父上! 母上! おはようございます!」
「おはようございますっ! 父上、母上っ」
先に席に着いていたロベールとマルセルに迎えられ、私とルイゾン様は微笑みを返す。
「ああ、おはよう、ロベール、マルセル」
「ふたりともおはよう」
ロベールとマルセルは、いつも以上にキラキラした瞳をルイゾン様に向けた。
「父上、えんせいおつかれさまです」
「ごぶじでなによりです」
ロベールとマルセルにとっても久しぶりのルイゾン様との朝食だ。
見るからに嬉しそうで、胸が温かくなる。
ルイゾン様は笑みを深めながら席に着いた。
「ほう、もうそんなことが言えるのか。ありがとう。疲れが吹っ飛んだよ」
ふたりは前のめりになって答える。
「ふっとんでよかったです!」
「もっともっとふっとばします!」
――か、かわいい。今日も天使だわ。
五歳になって半年以上過ぎたロベールとマルセルは、相変わらずのかわいらしさで私を悶えさせた。
眉上と襟足で切り揃えられた銀髪は今日もサラサラと揺れ、ルイゾン様とそっくりの青い瞳が輝いている。
同じ服装を好むのも変わっておらず、今日もお揃いのシャツに、半ズボンと長靴下姿だ。
だが、この一年でかなり背が伸び、どんどん服が小さくなっている。
胸やお腹はまだ子どもらしい丸みがあるけれど、手足が長くなったのか、全体的にすらっとした印象になった。
――日に日に大きくなるわ。
ルイゾン様の隣の席で、私は朝日より眩しいふたりに目を細める。
「ふたりとも元気にしていたか?」
ルイゾン様が淹れたてのお茶を手にしながら、ふたりに尋ねた。
「はい! 元気にしていました!」
「わたしもとっても元気です!」
「うん。それが一番だ。最近なにかいいことはあったかな? なにが楽しい?」
ロベールが嬉しそうに答える。
「いいこと、これからあります!」
「ほう? なにがあるんだ?」