【コンテスト用シナリオ】完全無欠の生徒会長は、自暴自棄な脱力系男子に溺愛される
第五話:涙と真実
〇放課後の生徒会室、報告会を目前に控え、全員それぞれの仕事でバタついている。
ひかり「今度の『報告会』ですが、理事長もいらっしゃるそうです」
ひかりが四人にそう言うと、生徒会室が動揺でにわかにざわつく。
会計「理事長って見たことないですけど、どんな人なんですか?」
ひかり「それが、私もよく知らないんです」
今までの報告会は校長、三学年それぞれの主任、生徒会担当の教諭までだった。何故いきなり理事長が出てくることになったかはひかりも分からない。そもそも、理事長は学園にも滅多にこない、名前も知らない、謎多き人物なのである。
ひかり「ですが、私たちがやるべきことは変わりません。しっかり頑張りましょう」
先日の一件以来、生徒会の結束は強くなっている。チームの頼もしさを感じ、ひかりはますます気合を入れる。
〇朝、誰もいない教室で生徒会の仕事を進めるひかり。
ひかり「校内アンケートの集計と、校則改定案のまとめと……」
総動員で手を動かしてもやることは盛りだくさんで、ひかりは頭を抱える。
すると、教室の扉がおもむろに開く。
ひかり「白堂くん!?」
いつも遅刻ギリギリの夜斗が、早朝に登校してきたことに対して驚くひかり。
夜斗「やることあれば手伝うけど」
ひかり「えっ……」
ひかりの机に置いてあったアンケートの束を拾い上げ、夜斗が言う。
夜斗「これ、放課後までにまとめればいいの?」
ひかり「え、えぇ……」
ひかりが呆然としているうちに、夜斗はそのまま出て行ってしまう。授業に出ることなくどこかへと消えてしまった夜斗。
ひかり(どういう風の吹き回しか知らないけど、授業をサボるのはどうかと思う!)
憤慨するひかり。
〇放課後、2年B組の教室
ひかり「これ、白堂くんが……?」
戻ってきた夜斗から渡された報告書を見て、ひかりは言葉を失う。あまりにも完璧な報告書で、クオリティの高いエクセルの表もばっちりついている。
ひかり「一日中ずっと作ってたの?」
夜斗「すぐ出来たけど、戻るのダルくて寝てただけ」
一日掛ったのかと思いきやそうではないことに、ますます言葉を失うひかり
ひかり「とにかくありがとう、助かったわ」
夜斗「ん」
じっとひかりを見つめる夜斗。
ひかり「あの、まだ何か」
夜斗「ご褒美くれないの?」
そう言ってひかりの手を握る夜斗を、ひかりは振り払う。
ひかり「ここ教室よ、馬鹿言わないで! もう行かないと」
夜斗「じゃあ、全部終わったら俺のお願い聞いて?」
生徒会室へ向かおうとするひかりに真剣なまなざしを向ける夜斗。
夜斗「待ってるから」
ひかり「っ」
不覚にもときめくひかり、徐々に自分の気持ちが変わりつつあることに気がついてはいるが、今はそれどころではない。
だが、報告会が終わった後に、いよいよしっかり夜斗と向き合う時が来たのかもしれないと、心構えをし始めるひかり。
〇数日後、南校舎にある特別会議室にて。
ひかり(緊張する……)
緊張の面持ちで座って待つひかり。やがて教員陣がぞろぞろと現れ、生徒会役員の向かいにずらりと並ぶ。
校長「理事長ですが、別件があり遅れています。先に進めてもらって構いません」
ひかり「かしこまりました。よろしくお願いいたします」
始まる報告会、綿密な準備と資料の甲斐あって、教師陣たちは興味深そうにひかりの話を聞く。
ひかり「以上で報告を終了します」
いくつかの質問を受け、ひかりが受け答えをする。
校長「わが校の優れた生徒会運営は他校からも注目されており、お褒めの言葉をいただいています。これも黒宮さんをはじめとするみなさんのおかげです。これからもよろしくお願いしますね」
ひかり「は、はい!」
校長からの言葉があってすぐに特別会議室の扉が開かれる。
理事長「すみません、大変遅くなりました」
初老の優しそうな男性、これが理事長だろうとひかりは察する。
理事長「みなさん初めまして。白堂侯隆と申します」
ひかり(えっ)
聞き覚えのある苗字に、ひかりは内心ひどく驚く。
理事長「普段はなかなか学園に顔を出せませんが、これからは少しずつ様子を見に来ようと思っています」
理事長の挨拶と共に報告会は終了し、ひかりは理事長に声を掛ける。
ひかり「あの、理事長」
理事長「あぁ、黒宮くんだね? 僕もあなたにお会いしたかった」
気さくな雰囲気の理事長。
ひかり「私と同じクラスに白堂くんという子がいるのですが、もしかして……」
理事長「うん、僕の甥だよ」
衝撃の事実に、ひかりはさっと血の気が引くのを感じる。
理事長「もともと全然やる気がなくて。僕も、彼の父である兄もずっと心配していてね。でも最近、黒宮くんと関わるようになってから素行が改善してきてるって校長先生に聞いて安心したんだ。生徒会の仕事も手伝ってると聞いてるよ。君のお陰だね」
穏やかに話す理事長と、呆然とし、混乱してうまく返事が出来ないひかり。
〇中央校舎、正面玄関
夜斗「ひかり」
下駄箱で待っていた夜斗はひかりに話しかけるが、ひかりは無視して靴を履き替えて帰ろうとする。
夜斗「待って」
ひかりの腕を掴もうとして、ひかりはそれを激しく振り払う。
ひかり「ずっと騙してたのね!」
憎悪に満ちた瞳で夜斗を見上げるひかり。
ひかり「私に近付いてきたのも、理事長とお父さんへのポイント稼ぎだったんでしょう!?」
夜斗「ひかり、話を聞いて」
ひかり「おかしいと思ったのよ! 生徒会のみんながすぐに私に謝ってきたから……!」
理事長と話した後校長と話し、「先日は大変でしたね。白堂くんも心配して、僕のところに話に来たんですよ」と言った校長。夜斗から校長へ、校長から生徒会メンバーへ話した結果、関係が改善されたことを知ったひかりは、自分が頑張ったおかげではなかったことを悟り大ショック。
ひかり「私が好きだっていうのも全部嘘なんでしょう!?」
夜斗「それは違う、お願いだから話を聞いて」
珍しくおろおろし、困惑する夜斗と、涙を流して取り乱すひかり。
ひかり「あなたなんか大っ嫌い!」
叫び、ひかりは走って去っていく。
ひかり「うぅ、うぅうっ……」
涙を流し、バス停で一人ぼっちで蹲るひかり。いつも後ろをついてくる夜斗が追いかけてこないのが、余計に悲しさを増幅させていた。
ひかり「今度の『報告会』ですが、理事長もいらっしゃるそうです」
ひかりが四人にそう言うと、生徒会室が動揺でにわかにざわつく。
会計「理事長って見たことないですけど、どんな人なんですか?」
ひかり「それが、私もよく知らないんです」
今までの報告会は校長、三学年それぞれの主任、生徒会担当の教諭までだった。何故いきなり理事長が出てくることになったかはひかりも分からない。そもそも、理事長は学園にも滅多にこない、名前も知らない、謎多き人物なのである。
ひかり「ですが、私たちがやるべきことは変わりません。しっかり頑張りましょう」
先日の一件以来、生徒会の結束は強くなっている。チームの頼もしさを感じ、ひかりはますます気合を入れる。
〇朝、誰もいない教室で生徒会の仕事を進めるひかり。
ひかり「校内アンケートの集計と、校則改定案のまとめと……」
総動員で手を動かしてもやることは盛りだくさんで、ひかりは頭を抱える。
すると、教室の扉がおもむろに開く。
ひかり「白堂くん!?」
いつも遅刻ギリギリの夜斗が、早朝に登校してきたことに対して驚くひかり。
夜斗「やることあれば手伝うけど」
ひかり「えっ……」
ひかりの机に置いてあったアンケートの束を拾い上げ、夜斗が言う。
夜斗「これ、放課後までにまとめればいいの?」
ひかり「え、えぇ……」
ひかりが呆然としているうちに、夜斗はそのまま出て行ってしまう。授業に出ることなくどこかへと消えてしまった夜斗。
ひかり(どういう風の吹き回しか知らないけど、授業をサボるのはどうかと思う!)
憤慨するひかり。
〇放課後、2年B組の教室
ひかり「これ、白堂くんが……?」
戻ってきた夜斗から渡された報告書を見て、ひかりは言葉を失う。あまりにも完璧な報告書で、クオリティの高いエクセルの表もばっちりついている。
ひかり「一日中ずっと作ってたの?」
夜斗「すぐ出来たけど、戻るのダルくて寝てただけ」
一日掛ったのかと思いきやそうではないことに、ますます言葉を失うひかり
ひかり「とにかくありがとう、助かったわ」
夜斗「ん」
じっとひかりを見つめる夜斗。
ひかり「あの、まだ何か」
夜斗「ご褒美くれないの?」
そう言ってひかりの手を握る夜斗を、ひかりは振り払う。
ひかり「ここ教室よ、馬鹿言わないで! もう行かないと」
夜斗「じゃあ、全部終わったら俺のお願い聞いて?」
生徒会室へ向かおうとするひかりに真剣なまなざしを向ける夜斗。
夜斗「待ってるから」
ひかり「っ」
不覚にもときめくひかり、徐々に自分の気持ちが変わりつつあることに気がついてはいるが、今はそれどころではない。
だが、報告会が終わった後に、いよいよしっかり夜斗と向き合う時が来たのかもしれないと、心構えをし始めるひかり。
〇数日後、南校舎にある特別会議室にて。
ひかり(緊張する……)
緊張の面持ちで座って待つひかり。やがて教員陣がぞろぞろと現れ、生徒会役員の向かいにずらりと並ぶ。
校長「理事長ですが、別件があり遅れています。先に進めてもらって構いません」
ひかり「かしこまりました。よろしくお願いいたします」
始まる報告会、綿密な準備と資料の甲斐あって、教師陣たちは興味深そうにひかりの話を聞く。
ひかり「以上で報告を終了します」
いくつかの質問を受け、ひかりが受け答えをする。
校長「わが校の優れた生徒会運営は他校からも注目されており、お褒めの言葉をいただいています。これも黒宮さんをはじめとするみなさんのおかげです。これからもよろしくお願いしますね」
ひかり「は、はい!」
校長からの言葉があってすぐに特別会議室の扉が開かれる。
理事長「すみません、大変遅くなりました」
初老の優しそうな男性、これが理事長だろうとひかりは察する。
理事長「みなさん初めまして。白堂侯隆と申します」
ひかり(えっ)
聞き覚えのある苗字に、ひかりは内心ひどく驚く。
理事長「普段はなかなか学園に顔を出せませんが、これからは少しずつ様子を見に来ようと思っています」
理事長の挨拶と共に報告会は終了し、ひかりは理事長に声を掛ける。
ひかり「あの、理事長」
理事長「あぁ、黒宮くんだね? 僕もあなたにお会いしたかった」
気さくな雰囲気の理事長。
ひかり「私と同じクラスに白堂くんという子がいるのですが、もしかして……」
理事長「うん、僕の甥だよ」
衝撃の事実に、ひかりはさっと血の気が引くのを感じる。
理事長「もともと全然やる気がなくて。僕も、彼の父である兄もずっと心配していてね。でも最近、黒宮くんと関わるようになってから素行が改善してきてるって校長先生に聞いて安心したんだ。生徒会の仕事も手伝ってると聞いてるよ。君のお陰だね」
穏やかに話す理事長と、呆然とし、混乱してうまく返事が出来ないひかり。
〇中央校舎、正面玄関
夜斗「ひかり」
下駄箱で待っていた夜斗はひかりに話しかけるが、ひかりは無視して靴を履き替えて帰ろうとする。
夜斗「待って」
ひかりの腕を掴もうとして、ひかりはそれを激しく振り払う。
ひかり「ずっと騙してたのね!」
憎悪に満ちた瞳で夜斗を見上げるひかり。
ひかり「私に近付いてきたのも、理事長とお父さんへのポイント稼ぎだったんでしょう!?」
夜斗「ひかり、話を聞いて」
ひかり「おかしいと思ったのよ! 生徒会のみんながすぐに私に謝ってきたから……!」
理事長と話した後校長と話し、「先日は大変でしたね。白堂くんも心配して、僕のところに話に来たんですよ」と言った校長。夜斗から校長へ、校長から生徒会メンバーへ話した結果、関係が改善されたことを知ったひかりは、自分が頑張ったおかげではなかったことを悟り大ショック。
ひかり「私が好きだっていうのも全部嘘なんでしょう!?」
夜斗「それは違う、お願いだから話を聞いて」
珍しくおろおろし、困惑する夜斗と、涙を流して取り乱すひかり。
ひかり「あなたなんか大っ嫌い!」
叫び、ひかりは走って去っていく。
ひかり「うぅ、うぅうっ……」
涙を流し、バス停で一人ぼっちで蹲るひかり。いつも後ろをついてくる夜斗が追いかけてこないのが、余計に悲しさを増幅させていた。