【コンテスト用シナリオ】完全無欠の生徒会長は、自暴自棄な脱力系男子に溺愛される
第四話:恋と体温
〇昼休み、生徒会室
ひかり「どういうことですか!? いきなり生徒会を辞めたいだなんて。しかも、全員って……!」
ひかりが詰めても、四人は気まずそうに俯いている。
会計「私たち、この学校の生徒会に憧れて入りました」
書記「生徒会役員は全生徒の模範。会長はまさしくその象徴で、みんな誇らしく思ってました。それなのに……」
話が一度途切れる。
庶務「会長が彼氏作るなんてがっかりです!」
庶務の声に、ひかりは目を見開く。
庶務2「普段生徒には厳しいくせに、これじゃあ示しがつかないじゃないです!」
ひかり「ちょっと待って! 私はそんなつもりじゃ―」
庶務「昨日、彼氏とここでずっとイチャイチャしてたじゃないですか!」
遮って指摘され、押し黙るひかり。昨日ずっと夜斗と二人でいたところを見られていたことにショックを受ける。
会計「最近は会議中も上の空だし、もう私たちついていけません!」
会計がそう言うと、四人は生徒会室から去っていく。
絶句し、呆然とする残されたひかり。
ひかり(どうしよう……!)
灰嶺学園の運営は生徒会役員によるところが大きい。校門前での朝の挨拶運動、昼放送の原稿を作って放送部に渡す、放課後の校内見回り、エトセトラを、生徒会役員から各クラスの係に指示を出していて動いている。
ひかり「……ううん、落ち込んでいる暇はないわ。まずは私一人で何とかしないと! そうしたらみんな見直してくれるはず……!」
気を取り直して決意を新たにするひかり。
〇朝、校門前
ひかり「おはようございます!」
いつもよりずっと、誰よりも早く登校したひかりは校門前の挨拶運動を一人でやっている。
ひかり「そこ、スカートが短いですよ!」
校則違反者に目を光らせているうちに予鈴。大方の生徒が登校を終えたところで、焦る様子もなくゆっくりと歩いてくる夜斗の姿がある。
夜斗「おはよ」
ひかり「……」
返事をせず、夜斗をきっと睨みつけるひかり。
夜斗「寝坊した? 寝癖ついているけど」
ひかり「違うわよ! 私、今日からとっても忙しくなるの。悪いけどあなたに構ってる暇はないから」
完璧に直したはずなのに、僅かに乱れた寝癖を指摘されたことに内心悔しさを覚えつつ、ひかりは夜斗を追い払う。
〇昼休み
授業が終わった瞬間に何かを紙に書き始め、教室を飛び出していくひかり。
その様子を、頬杖をつきながら見送る夜斗。
ひかり「放送室に原稿を届けたら、急いで各クラスの美化点検をしないと……!」
一息つく暇もなく、校内を駆けずり回るひかり。その様子を少し離れたところから見つめる夜斗。
それからしばらく、朝は6時半に登校し、放課後も下校時間ギリギリに帰る生活をひかりは送る。
〇数日後、朝の校門前
ひかり「おはようございます」
目の下にクマを作り、校門前に立つひかり。髪のツヤはなくなってパサついており、見るからに疲れている。
夜斗「おはよ」
いつものように遅刻ギリギリで来た夜斗が声を掛けるが、ひかりは虚ろな目のまま上の空、ノーリアクション。
夜斗「……ちょっと、大丈夫?」
ひかり「うるさい。話しかけないで、よ……」
ひかりが悪態をついたと同時にふらつくと、その身体を夜斗が抱きとめる。
夜斗「ひかり」
完全に意識を失ってしまったひかりは夜斗の呼びかけに答えず、瞳を閉じている。
夜斗はそのままひかりをお姫様抱っこし、校内へ勢いよく走り出していく。
〇保健室
ゆっくりとひかりの意識が浮上し、目の前には白い保健室の天井。
ひかり「わたし、は……えっ!?」
何度かゆっくり瞬きをした後、我に返ってベッドから起き上がるひかり。すぐさまカーテンが開かれて夜斗が入ってくる。
夜斗「起きた?」
ひかり「は、白堂くん……」
ひかりを見下ろす夜斗は、どこか怒っているような雰囲気を纏っている。
夜斗「無理して倒れるなんて、アンタ意外と馬鹿だったんだな」
冷たく言い放たれ、ひかりは俯く。ベッドの布団を強く握り締める。
ひかり「……だって、しょうがないじゃない!」
大声を出すと、夜斗は少し驚いて見せる。
ひかり「誰も私のことなんて助けてくれない! そんなの分かってるわよ、ずっとそうだったもの! だったら私一人で限界まで頑張るしかないじゃない!」
感情をぶちまけ、涙を流すひかり。夜斗がその手を握り、手の甲を優しく擦る。
夜斗「……ごめん、俺が守るって言ったのに」
夜斗が謝罪すると、ひかりは泣くのをやめる。今までマイペースだった夜斗が落ち込んでいる姿を見るのは初めてで、ひかりは意外に思う。
夜斗「もう二度とひかりをこんな目に合わせたくない。お願いだから、俺から離れないで」
ひかり「え、っ……」
そのまま頬に手を添えて、軽くひかりの唇にキスをする。すぐ離れると、夜斗は真剣な表情でひかりを見つめている。
ひかり「白堂くん……?」
そのまま、夜斗はどこかへ立ち去ってしまう。
〇次の日、朝、2年B組の教室前。
会計「すみませんでした!」
生徒会四人から揃って頭を下げられ、「えっ」と声を上げるひかり。
書記「会長が一人で全部の仕事をしていたなんて」
庶務「私たち、仕事を押し付けるつもりはなかったんです」
申し訳なさそうにする四人に、ひかりは自らの努力が認められたと思いほっと胸を撫でおろす。
ひかり「私にも至らなかった点ばかりです。また力を貸してくれますか?」
そう言うと、頷く四人。これにて一件落着。
〇放課後、廊下―校長室前
職員室からの帰りに歩いていると、校長室から夜斗が出てくる。
ひかり「白堂くん」
ひかりが声を掛けると、夜斗は気づく。
ひかり「昨日はありがとう。保健室に運んでくれたのに、きちんと御礼が言えなくて」
夜斗「別に、大したことじゃないし」
夜斗、ひかりの唇に人差し指をちょんとつけてにっこりと笑う。
夜斗「あったかくて、柔らかくて良かった」
ひかり「なっ……!」
真っ赤になるひかりと夜斗。ぎゃーぎゃー言いながら歩いているうちに、ひかりの中にある疑問が浮かぶ。
ひかり(白堂くん、どうして校長室から出てきたのかしら?)
夜斗は問題児だからそういうこともあるだろうという結論に達し、ひかりは夜斗にそれを聞かないまま歩いていった。
ひかり「どういうことですか!? いきなり生徒会を辞めたいだなんて。しかも、全員って……!」
ひかりが詰めても、四人は気まずそうに俯いている。
会計「私たち、この学校の生徒会に憧れて入りました」
書記「生徒会役員は全生徒の模範。会長はまさしくその象徴で、みんな誇らしく思ってました。それなのに……」
話が一度途切れる。
庶務「会長が彼氏作るなんてがっかりです!」
庶務の声に、ひかりは目を見開く。
庶務2「普段生徒には厳しいくせに、これじゃあ示しがつかないじゃないです!」
ひかり「ちょっと待って! 私はそんなつもりじゃ―」
庶務「昨日、彼氏とここでずっとイチャイチャしてたじゃないですか!」
遮って指摘され、押し黙るひかり。昨日ずっと夜斗と二人でいたところを見られていたことにショックを受ける。
会計「最近は会議中も上の空だし、もう私たちついていけません!」
会計がそう言うと、四人は生徒会室から去っていく。
絶句し、呆然とする残されたひかり。
ひかり(どうしよう……!)
灰嶺学園の運営は生徒会役員によるところが大きい。校門前での朝の挨拶運動、昼放送の原稿を作って放送部に渡す、放課後の校内見回り、エトセトラを、生徒会役員から各クラスの係に指示を出していて動いている。
ひかり「……ううん、落ち込んでいる暇はないわ。まずは私一人で何とかしないと! そうしたらみんな見直してくれるはず……!」
気を取り直して決意を新たにするひかり。
〇朝、校門前
ひかり「おはようございます!」
いつもよりずっと、誰よりも早く登校したひかりは校門前の挨拶運動を一人でやっている。
ひかり「そこ、スカートが短いですよ!」
校則違反者に目を光らせているうちに予鈴。大方の生徒が登校を終えたところで、焦る様子もなくゆっくりと歩いてくる夜斗の姿がある。
夜斗「おはよ」
ひかり「……」
返事をせず、夜斗をきっと睨みつけるひかり。
夜斗「寝坊した? 寝癖ついているけど」
ひかり「違うわよ! 私、今日からとっても忙しくなるの。悪いけどあなたに構ってる暇はないから」
完璧に直したはずなのに、僅かに乱れた寝癖を指摘されたことに内心悔しさを覚えつつ、ひかりは夜斗を追い払う。
〇昼休み
授業が終わった瞬間に何かを紙に書き始め、教室を飛び出していくひかり。
その様子を、頬杖をつきながら見送る夜斗。
ひかり「放送室に原稿を届けたら、急いで各クラスの美化点検をしないと……!」
一息つく暇もなく、校内を駆けずり回るひかり。その様子を少し離れたところから見つめる夜斗。
それからしばらく、朝は6時半に登校し、放課後も下校時間ギリギリに帰る生活をひかりは送る。
〇数日後、朝の校門前
ひかり「おはようございます」
目の下にクマを作り、校門前に立つひかり。髪のツヤはなくなってパサついており、見るからに疲れている。
夜斗「おはよ」
いつものように遅刻ギリギリで来た夜斗が声を掛けるが、ひかりは虚ろな目のまま上の空、ノーリアクション。
夜斗「……ちょっと、大丈夫?」
ひかり「うるさい。話しかけないで、よ……」
ひかりが悪態をついたと同時にふらつくと、その身体を夜斗が抱きとめる。
夜斗「ひかり」
完全に意識を失ってしまったひかりは夜斗の呼びかけに答えず、瞳を閉じている。
夜斗はそのままひかりをお姫様抱っこし、校内へ勢いよく走り出していく。
〇保健室
ゆっくりとひかりの意識が浮上し、目の前には白い保健室の天井。
ひかり「わたし、は……えっ!?」
何度かゆっくり瞬きをした後、我に返ってベッドから起き上がるひかり。すぐさまカーテンが開かれて夜斗が入ってくる。
夜斗「起きた?」
ひかり「は、白堂くん……」
ひかりを見下ろす夜斗は、どこか怒っているような雰囲気を纏っている。
夜斗「無理して倒れるなんて、アンタ意外と馬鹿だったんだな」
冷たく言い放たれ、ひかりは俯く。ベッドの布団を強く握り締める。
ひかり「……だって、しょうがないじゃない!」
大声を出すと、夜斗は少し驚いて見せる。
ひかり「誰も私のことなんて助けてくれない! そんなの分かってるわよ、ずっとそうだったもの! だったら私一人で限界まで頑張るしかないじゃない!」
感情をぶちまけ、涙を流すひかり。夜斗がその手を握り、手の甲を優しく擦る。
夜斗「……ごめん、俺が守るって言ったのに」
夜斗が謝罪すると、ひかりは泣くのをやめる。今までマイペースだった夜斗が落ち込んでいる姿を見るのは初めてで、ひかりは意外に思う。
夜斗「もう二度とひかりをこんな目に合わせたくない。お願いだから、俺から離れないで」
ひかり「え、っ……」
そのまま頬に手を添えて、軽くひかりの唇にキスをする。すぐ離れると、夜斗は真剣な表情でひかりを見つめている。
ひかり「白堂くん……?」
そのまま、夜斗はどこかへ立ち去ってしまう。
〇次の日、朝、2年B組の教室前。
会計「すみませんでした!」
生徒会四人から揃って頭を下げられ、「えっ」と声を上げるひかり。
書記「会長が一人で全部の仕事をしていたなんて」
庶務「私たち、仕事を押し付けるつもりはなかったんです」
申し訳なさそうにする四人に、ひかりは自らの努力が認められたと思いほっと胸を撫でおろす。
ひかり「私にも至らなかった点ばかりです。また力を貸してくれますか?」
そう言うと、頷く四人。これにて一件落着。
〇放課後、廊下―校長室前
職員室からの帰りに歩いていると、校長室から夜斗が出てくる。
ひかり「白堂くん」
ひかりが声を掛けると、夜斗は気づく。
ひかり「昨日はありがとう。保健室に運んでくれたのに、きちんと御礼が言えなくて」
夜斗「別に、大したことじゃないし」
夜斗、ひかりの唇に人差し指をちょんとつけてにっこりと笑う。
夜斗「あったかくて、柔らかくて良かった」
ひかり「なっ……!」
真っ赤になるひかりと夜斗。ぎゃーぎゃー言いながら歩いているうちに、ひかりの中にある疑問が浮かぶ。
ひかり(白堂くん、どうして校長室から出てきたのかしら?)
夜斗は問題児だからそういうこともあるだろうという結論に達し、ひかりは夜斗にそれを聞かないまま歩いていった。