拝啓、愛しのパイロット様
(羨ましい)
両親からの愛をほとんど知らずに育った小町には、ふたりの関係性が一際眩しく映る。
宇佐美家の仲の良さを羨ましく思っていると、実登里がふっと真顔になった。
「ねえ。ここだけの話、打ち合わせの日になにかおかしなことでもあった?」
「おかしなことですか?」
首を傾げながら聞き返すと、実登里はうーんと唸り、頬に手を添えながら説明した。
「小町さんと打ち合わせした次の日ね、腰の具合を見に、あの子が家に来たんだけど、なにかを思い出しては笑いっぱなしで。『楽しい打ち合わせだった』って」
心底不思議そうな実登里から由桔也の様子を知らされ、恥ずかしさのあまり顔を伏せる。
彼の思い出し笑いに心当たりがありすぎる。
「あ、いや。それは多分、平気なやつです。お気になさらず」
コホンと咳払いをした小町は、焦りながらも実登里の杞憂を吹き飛ばした。
面白かったと評された原因が自分にあるのは明白だった。
(やっぱり、変な人だって思われてたんだ)
彼自身のことはそっちのけで書く字に見惚れて、褒めちぎるなんて、普通はあまりしないものだろう。
「まあ、それならいいんだけど」
実登里は腑に落ちないという表情を浮かべながらも、それ以上は追求しないでくれた。
「とにかく、打ち合わせが無事に終わってよかったわ。今後も由桔也と、やりとりすると思うけれど、よろしくね、小町さん」
「はい、もちろん」
「私もがんばらなくっちゃ」
ウキウキと弾んだ様子でステップを踏む実登里の後ろ姿を見送った。
由桔也と出掛ける約束をしたことは、当然実登里には秘密だ。