拝啓、愛しのパイロット様
2.メーデー
「小町さ〜ん!」
いつものようにスクールにやってきた小町が教室の中に入るやいなや、待ちかねていたように実登里が駆け寄ってくる。
「この間は本当にごめんなさいね!」
両手を合わせ、腰を屈めるその姿にこちらこそ恐縮するばかりだ。
「あ、いえ!実登里先生こそ、腰の具合はどうですか?」
「ゆっくり休んだから、もう平気よ。ほらこの通りピンピンしているわ!」
健在をアピールするため、実登里はポンと腰を軽く叩いてみせた。
「個展もありますし、あまり無理なさらないでくださいね。ぎっくり腰はくせになるって、うちの祖母もよく言っていました」
やり過ぎとも思える仕草に、小町は慌てて止めに入る。
「お気遣いありがとう。でも本当によくなったのよ。痛めたときは一生起き上がれないんじゃないかって思ったけど……」
「あはは!」
療養生活が、よほど大変だったのだろう。哀愁のこもったセリフに、小町はたまらず笑い出した。
なにはともあれ、実登里が元気になってよかった。
「初対面だったのに、いきなりふたりきりにしてしまって申し訳なかったわ。うちの息子がなにか失礼なことを言わなかったかしら?」
「あ、いえ!全然!私、実登里先生にあんな素敵な息子さんがいらっしゃるなんて、ちっとも知らなくて。個展の準備を手伝ってくれるなんて、素晴らしい息子さんですね」
「ええ。いつも手伝ってくれるのよ。本当に助かるわ」
息子への賛辞を素直に受け取る実登里の態度には愛が溢れている。