恋を知らないふりする君へ
「ねぇ魅憂」
「なっ・・・な、に」
「なんで恋したくないの?」
なんで・・・?
そんなの、言えるわけがない。
だって、私は──。
「こっ、恋なんて面倒じゃん⁉」
声が裏返る。
理由を聞かれると、私がいつも返す言葉。
だいたいこれで乗り越えられるけど、今の変貌した碧李に効くかどうか・・・。
「・・・ふぅん」
碧李は納得いってなさそうだけど、私の必死さを見てか、元の顔に戻った。
「・・・で」
「・・・で?」
なにが『・・・で』なんだろう。
まだ続きがあるってこと・・・?
「俺、さっきも言った通り恋がしたいんだけど」
あ、恋・・・あれ、本気だったんだ。
「えっと・・・女の子とはあまり仲良しではないけど、いい子はたくさんいるよ。このクラスでも、違うクラスでも、先輩でも」
大親友が恋をしたいと言うならば。
私には理解できない領域だけど、私と碧李は違う。
私にできるなら、精一杯応援するべきだろう。
「そうじゃなくて」
私の回答に笑みを浮かべた碧李は、私を抱いたまま顔を覗き込んできた。
その顔は甘くて、意地悪で、でも真剣で、熱を帯びていて・・・。
あれ、なにを言われるんだろう・・・?
複雑な感情が入り乱れているようなその瞳には、不思議な力がある。
このまま瞳にのめり込んでしまうような、そんな気がする。
私がぼーっとしていると、碧李は甘い笑顔で爆弾を落とした。

「俺、面倒でもいいから魅憂がいい」
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