ユーレイくんとの恋はあぶない秘密が多すぎる
○バイト終わり、夜
結歌「お疲れ様です。お先失礼します」
店長たちに見送られて店を出ると、外で待っている嶺(イケメンver)を見つけ駆け寄る。
結歌「幽日野くん!? なんでここに……」
嶺「迎えに来たんだ。夜に女の子一人で歩かせるなんて危ないでしょ」
女の子扱いに慣れていない結歌は気恥ずかしさのあまり口をもごもごとする。
結歌「……ありがとう」
嶺「ん。じゃあ行こうか」
肩を並べて歩いていく二人。
結歌(……あれ? あたし幽日野くんにバイト先って教えたっけ?)
ふと疑問に思いちらりと見上げる。
嶺「どうかした?」
結歌「あっ、ううん! なんでも」
結歌(……まあいいか)
○嶺の作業部屋
音楽関係の機材がたくさんある部屋でキラキラとした目をしている結歌。
結歌「うわ~! すごい! いつもここでやってるの?」
嶺「うん。叔父さんが好きなだけやってみるといいって言ってくれてね。一人暮らしなのに一軒家に住んでいるから部屋が余って仕方ないんだって」
結歌「おじさん?」
嶺「母方の兄で神社の神主をやっている人だよ。オレ、昔から見えちゃいけないのが見えてたって言ったでしょ? 小さいころは九州の方で住んでいたんだけどさ、母親が気味悪がってね。東京の叔父さんに押し付けたんだ。でも叔父さんは文句も言わずに面倒見てくれるし、やりたいことさせてくれる。いい人だよ」
結歌「……ごめん。聞いちゃいけないことだったよね」
申し訳なさそうに縮こまり、シワシワな顔をする結歌に吹き出す嶺。
嶺「そんな顔しなくても。別に今は何とも思っていないから平気だよ」
結歌「強いんだね」
嶺「そう? でもそうだとしたら結歌ちゃんの動画が心の支えになっていたからだと思う」
初めてみるくらい優しい表情をする嶺にドキッとする。
結歌「あたしの動画なんて、幽日野くんのに比べたら内輪向けのものだったし、そんな大したものじゃないよ」
嶺「ううん。オレにとっては何よりも大切な時間だったよ。……オレさ、家族もいなくて当然友達もいなかったからさ。家にいることもできなくて学校のパソコンでずっとワイツベを見て育ったんだ。そしてオレも歌ってみたいと思った。今のオレが、zeroがあるのは結歌ちゃんのおかげなんだ」
真っ直ぐと向き合う二人。
嶺「だからありがとう。こうして恩返しできる機会が巡ってきて嬉しいよ」
結歌「そ、そう? あ、ははは」
さらりとこっぱずかしいことを言ってのける嶺に思わず赤面。
結歌(意外とと言ったら失礼だけど、男らしいというか……。でも、そう言ってもらえて嬉しいな)
嶺「ところでさ、本格的に練習始めていく前に聞きたいんだけど。ずっと練習を続けてきたって言ってたよね? いつもはどこで練習していたの?」
結歌「え? ああ、広場でだけど」
嶺「広場……って、外!? あ、危ないじゃん。しかも夜なんでしょ!? ダメダメ! そんなことさせられないよ! これからはここ使って!?」
結歌「え? でも……いいの?」
嶺「当たり前! 彼女を外、しかも夜に放り出す彼氏なんているわけないでしょ! バイト終わりも必ず迎えに行くから連絡してね?」
結歌「う、うん」
あまりの剣幕にたじたじに。けれど嬉しいので自然と顔が笑ってしまう。
嶺「さて、それじゃあオレ、ちょっと準備してくるね。好きに見てて」
部屋を出て行こうとする嶺だったが、ふと止まって振り返る。
嶺「あ、そうだ。この部屋だけなら自由にしていていいけど、オレの部屋とか叔父さんの部屋とかには入らないでね」
結歌「あ、うん。もちろん!」
返事を聞いて微笑みを浮かべて出て行く嶺。それを見送ってへなへなと座り込む結歌。
結歌「はあ~。もう心臓鳴りっぱなしだよ……」
赤くなった両頬を押え、先ほどの優しい顔を思い出す。
結歌(幽日野くんはなんだか慣れているというか、距離感が近いというか……)
結歌「……どうしてあんなに優しくしてくれるんだろう」
モノローグ:もちろん彼氏彼女だからというのは分かっている。でもうわべだけの関係なはずで、本当にあたしのことを好いてくれている訳ではないはずだ。でも……
結歌「あんな顔されたら……勘違いしちゃうよ」
モノローグ:今まで彼氏なんて作っている場合じゃなかったからよくわからないけれど、もしかして世の中の彼氏彼女は皆あんな感じなのだろうか。
結歌「……はあ。慣れないなぁ」
平常心を取り戻そうと機材を見て回る。けれど頭の中は嶺のことでいっぱい。
結歌(そう言えば幽日野くん、九州の方の出身って言ってたなぁ。あたしも実はなんだよね。すごい偶然)
懐かしそうに目を細め、昔を思い出す。
結歌(……そう言えば、お母さんが入院したときに仲良くなったあの子は今、どうしているのかな)
幼い嶺の後ろ姿をカットイン。
結歌(もう名前も思い出せないけど、元気だといいなぁ)