ユーレイくんとの恋はあぶない秘密が多すぎる
○時間経過。数日後、嶺の作業部屋
歌の練習中の結歌と、聞き入っている嶺。
結歌「――歌えた……。通して歌えたよ!」
喜色満面で振り返る結歌に優しく頷く。
嶺「歌いきるのは本当に久しぶりだって聞いたけど、発声とかに問題はなさそうだったね。モヤに邪魔されながらも練習していたおかげだと思うよ。おめでとう」
結歌「ありがとう! 幽日野くんのおかげだよ! 幽日野くんと出会ってから、黒モヤにまとわりつかれていないし、体調もいいんだ!」
嶺「それならよかった。……ね、それよりさ、そろそろ名前で呼んでもらえない?」
結歌「え?」
嶺「幽日野くんだとちょっと距離があるかなって。ほら、一応カレカノなんだし」
結歌「……それじゃあ…………嶺、くん?」
嶺「うん」
結歌「!」
とろけるように微笑む嶺に心臓がはげしく音を鳴らす。慌てて顔を背けるがなかなか落ち付いてくれない。
結歌(な、なんなのあの顔は!? あんな……幸せですって顔……直視できない!!)
嶺「って、もうこんな時間か。流石に学校終わりからやってると時間足りないね」
時計のカット。もう夜10時前を指している。
結歌「もうそんな時間が経ったんだね。全然気が付かなかったや」
結歌(幽日野くん……嶺くんと一緒だと本当に時間があっという間だなぁ……)
嶺「そろそろ帰らないと、明日も学校あるし大変だよね。送っていくよ」
嶺「ありがとう。……その前にお手洗い借りてもいいかな」
嶺「ああ。案内するよ。ついてきて」
○お手洗い後、嶺の家の廊下
手を拭きながら廊下へと出る結歌。作業部屋までの道を歩く。
結歌(それにしても広いなぁ。叔父さん一人暮らしだったって言っていたけど、これは部屋が余るわけだ)
モノローグ:ふと一つの部屋のドアが少しだけ開いていることに気が付く。
人の家の部屋を勝手に覗くのは悪いと思い、見ないようにして通り過ぎる。
結歌「……!?」
けれど一瞬ちらりと信じられないものが見え、思わず振り返る。
結歌「……」
いけないと知りつつもドアを少しだけ押して部屋を覗く。
そこに在ったのは――
結歌「――なに、これ」
壁一面の結歌の写真。そのどれもが身に覚えのないもので、頭の中にある言葉が浮かぶ。
結歌「――盗、撮……?」
しかも最近のものからここ数年(中学2年生のころのもの)のものもある。
結歌(もしかして、何年もつけられて……?)
そう認識した途端ぞっとして青くなる。
結歌「…………逃げなきゃ」
モノローグ:何が目的かはわからない。けれどここにいては危険だと警鐘が鳴っている。
混乱しながらもここから離れなくてはと後ずさると、背後のもの(嶺)にぶつかり、上から聞きなれた声が降ってくる。
嶺「――いけない子だ」
結歌「!!」
はじけるように振り返るといつも通りの笑みを浮かべる嶺がいた。
結歌「れ、嶺く……」
嶺「オレの部屋、入っちゃダメって言ったよね?」
前に置いてあったテーブルに手をつく嶺。嶺の身体と机に挟まれて身動きが取れなくなる。
嶺「自分から男の部屋に飛び込むとか、警戒心が足りないよ?」
怯える結歌の首から顎をするりと撫で、上を向かせ、目を合わせる。
嶺「でも、ま。そんなところもどうしようもなく可愛いよね。……昔から」
怪しい嶺の微笑みのアップで次話へ。