ユーレイくんとの恋はあぶない秘密が多すぎる

第3話 拒絶と過去


 ○前回の続きから


 (れい)「そんなところもどうしようもなく可愛いよね。……昔から」
 結歌(ゆか)「……いつ、から」


 絞り出すように声を上げれば、キョトンと首を傾げられる。

 嶺「? ああ、これのこと? 写真をとるようになったのは中学二年生のころからかなぁ。だから三年前だよ。あの日、偶然キミを見かけたんだ。ひと目でわかったよ。キミが探し続けていたyukaちゃんだって」


 嶺のモノローグ:5年前、心の支えになっていた「サラサラチャンネル」の更新が唐突に止まった。親に捨てられたオレが、それでも潰れずに生きてこれたのはあれがあったから。それが突然消えてしまい、オレは相当荒れた。

 嶺「あのときは本当に死んじゃうかと思ったよ。親に捨てられ、キミにも捨てられたのかって思うとね。今どこにいるのか、何があったのか、知りたくてたまらなかった。だから探し回ったよ」


 モノローグ:ワイツベを、故郷を、探し回った。そして見つけた。

 嶺「驚いたよ。まさか東京にいるだなんて思っていなかったからさ。すごくうれしかったなぁ。……でも、キミは黒いモヤに囲まれていた。何かあったんだってすぐに分かったよ」

 モノローグ:調べていくうちに、突然更新が止まった理由が分かった。――両親が事故で亡くなってしまったのだと。

 嶺「胸が痛んだよ。あれだけ明るく笑っていたキミが澱んだ目をしていて……。キミにはずっと笑っていてほしかった。だからどうすれば励ませるのか考えたんだ」

 モノローグ:そして行きついたのが歌だった。

 嶺「あの日キミがオレを救ってくれたように、オレもキミを支えてあげたい。そう思った。Zeroとして活動を始めたのも、キミにエールを届けるためだよ」
 結歌「……!」
 嶺「……でも遠巻きじゃ、キミにまとわりつく黒いモヤは消えなかった。だから傍で支えてあげなきゃって思った」

 嶺は崇拝でもするかのように結歌の手を自分の頬へ運ぶ。

 嶺「もう大丈夫。安心してね。これからはずっと、オレが傍で支えるから」

 嶺の告白に真っ青になった結歌。


 結歌(や、ヤバい。完全にヤバい人だ……! どうにかして逃げないと……!)

 結歌のモノローグ:嶺くんは救ってくれたなんて言うけれど、あたしには身に覚えがなかった。一度も会ったことのない人から、数年間もつけられていたなんて……!


 結歌「い、いやっ! 触らないで!」


 恐ろしくて手を振り払い、突き飛ばした。嶺がよろけた隙に抜け出し走り出す。
 罪悪感がないわけではなかったが、とにかく今は逃げないとという思いだけがあった。

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