君が気色悪い 恋愛短編小説

私はアイツが嫌いだった



感嘆の声を上げながら、見惚れる女子生徒を横目に廊下を歩く彼の姿を転校した初日に見るなんて、考えもしなかった。



「はいはい、皆ー席について」




私は転校初日でこの「草元高校」という底辺高校に飛ばされてしまった身としては、早く卒業して大学進学を目指す道しかなかった。



だって、この学校ーーー全国指折りのヤンキー高校でこの地獄から早く抜け出したかったからだ。




でも何故こんな事になってしまったのか。




それは父親の失業がきっかけだった。



父親の会社が潰れてしまい、差し押さえがあって簡単に言えば正式な夜逃げをしてここまでやってきた。



「ーー美音です。よろしくお願いします」





ーーー何あれ?ガリ勉?ーーー




ーーーブッス………なにあれ………ーーー





ーーーメンヘラだよな………ダルそうーーー





流石は底辺高校。





クラスの対応も、メガネを掛けている私を一気に罵る。




「でも……俺はいいと思うけど?」




爽やかな元気を届けてくれるような、懐かしい声がした。




言葉が詰まった。




この声を私は知っている。




懐かしい声でもあり、そして同時にーー





「あんたなんか………あんたなんか、大嫌い!!!」




ーー一番憎い相手「翔」の声だったから。

私、この学校を支配するブラックローズ元幼馴染の「翔」総長が嫌い。



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