私が好きになったのはどっちなの?
「あいつは俺に嘘はつかないよ。でも、今動かなかったら、樹はそのうち渡辺さんとくっつくと思う。だから今週末、樹を釣りに誘ってみれば?」
 ここで私が『うん』と言えば、先生は安心してドイツに行けるのかな。
 だったら、先生との思い出が欲しい。
「……そうですね。でも、まだ自信がないです。最後にレッスンをしてもらえませんか?」
 私からレッスンをお願いするのは初めてだったせいか、先生が優しく先を促す。
「どんな?」
「私に……キスのレッスンをお願いします」
 私のとんでもないお願いに彼が大きく目を見開いた。
「まだ酔ってるの?」
「酔ってません」
 私がすぐに否定しても彼は信じられないようで疑り深く聞いてくる。
「本当に? キスのレッスンなら今朝したじゃないか」
「それはフリで本当にはしなかったじゃないですか?」
「それは初めては好きな男とした方がいいと思ったからだよ」
 その好きな男があなたなんです……と言う勇気はない。
 だから、代わりの理由を考える。
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