私が好きになったのはどっちなの?
「エレベーターの中で? ……ああ、彼女の顔にまつ毛ついてたから取っただけ」
 この口調だと本当になにもなかったのだろう。
「昨日、お前も麻里さんの店で食べてたんだろ? 水森さんを送って行ったって、麻里さんが言ってた」
「まあね。樹とはすれ違いになったけど、ルカと彼女と三人で食事したんだよ」
「ルカなら会った。……なあ、ルカはお前を迎えに来たんだろ?」
 ルカは数年前にも来日したことがあって、樹ともそれなりに仲がいい。
「俺がお世話になったエルマン教授が病気でね。ドイツに戻って来いとは言われたけど、今のところ行く気はない」
「前にお前がドイツ行き悩んでる時にも言ったけど、俺のことは心配いらないから。うちの病院のことだって親父も元気だし、気にしなくていい」
「わかってる」
 そう。前回ドイツに行く時は、樹が心配で行くのを迷っていたが、『俺はもう大丈夫だから』と彼に背中を押されたのだ。
「だったら、なんですぐにドイツに行こうとしない?」
「俺が行かなくてもルカがいる。あいつは俺が認めるライバルだから」
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