負け犬のメイサちゃんは100日後に本当の恋を知る

冬が来て、そしてまた、春になる

 俺、須藤藤也が、負け犬先輩こと三枝メイサに手を貸したのは、嫌がらせのつもりだった。

 ……一ノ瀬颯に対しての。



 高校に入ってすぐ、俺は柊先輩に憧れた。

 つっても、憧れ止まり。

 園芸部で初めて会ったときは、初恋の人に似た綺麗な人だとは思ったけど、それを理由に好きになるのはなんか違う気がして、意識的に好きにならないようにしてた。

 花を扱う手つきの優しさや、植物に詳しいところに惹かれなくもないけど、あくまで憧れ。

 尊敬できる先輩として、俺はきちんと距離を保った。


 ……そういうのは得意だ。

 自分が顔がいいのも、モテるのもわかってる。

 だからこそ、相手との距離を意識して保つ。

 そうしないと面倒になるのは中学までで嫌ってほどわかってたし、顔のいい親父や伯父が上手いことやるのを見てきたから、距離感は自然と身についてた。



 だから、その距離を平気で割ってくる一ノ瀬先輩のことは好きじゃなかった。

 ていうか、園芸部の男子で一ノ瀬先輩を好きな奴はいないと思う。

 かわいくて綺麗な柊先輩につきまとって、部活の邪魔して。

 お前、女マネと付き合ってるだろうが! っていうさ。


 でも、そういうやっかみとは裏腹に、一ノ瀬先輩はしっかり柊先輩の心を射止めた。

 それならまあ、しょうがないかって、俺はわりと柊先輩に協力的だったと思う。

 ……あと俺個人として、あの女マネと付き合わなかった理由に納得して、それから嫌いでいられなくなったのもある。

 盗み聞きしちゃっただけだけど、女マネ……三枝メイサが一ノ瀬先輩の姉にそっくりだと聞いた。

 俺だって桔花と蓮乃にそっくりな従姉がいたら、付き合う気にはならない。

 いや、無理でしょ。

 そもそも桔花と蓮乃は母さんに似てるから、同じ顔の女にそういう感情は持てない。絶対無理。



 それはそれとして、柊先輩を「あー、持ってかれたか」とは思ってた。

 三枝メイサが一ノ瀬先輩を好きなのも、見てればわかった。

 だから、図書室でメソメソする三枝先輩を見て、「鬱陶しい」と思うと同時に、「顔は悪くないし、磨けばいい女になるんじゃないか」とも思った。

 で、向こうも「そんなに言うなら、私に勝たせてよ! 颯がしてたみたいに、100日で!」なんてわけわかんないことを言ってきた。
 ちょうどいいじゃん。

 三枝先輩を磨いて、一ノ瀬先輩に少しでも悔しい思いをさせられればいいなって。そんな不純な動機で、俺は三枝先輩のバカな台詞に乗っかることにした。


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