運命の恋は、雨のバス停から
返却
週末の午後、私は雨宮さんと待ち合わせのため、駅前のカフェに来ていた。
私が電話した翌日に彼から連絡があり、お互いの都合をすり合わせた結果、今日の午後に会うことになったのだ。

カフェの扉を開けると、窓際の席に雨宮さんが座っていた。
白のシャツの上にグレーのテーラードジャケットを羽織り、デニムという装い。
背筋を伸ばして座っている姿に、自然と目を奪われてしまう。

視線が合うと、雨宮さんはフッと微笑んだ。

「こんにちは。お待たせしてしまってすみません」
「いえ、大丈夫です。僕もさっき来たばかりなので」

私は緊張しながら彼の前の席に腰を下ろし、店員にコーヒーを注文した。

「傘、本当に助かりました」

雨宮さんが丁寧にたたまれた傘を差し出してきて、私は受け取った。

「いえ。でも、傘を返していただけるとは思っていませんでした。あの時は、もう会うことはないかなと思っていたので……」
「実は、僕もそう思ってました」

肩を竦めながら笑う仕草に、私も思わず笑みがこぼれた。

「ですよね。まさか、私の会社で再会するなんて想像もしていなかったです」
「本当に偶然でしたよね。僕も、受付カウンターに座っている椎名さんを見た瞬間、めちゃくちゃ驚きました」
「え、そんなに驚いたようには見えませんでしたけど」

つい、正直に言ってしまった。
緊張しているのかなとは思ったけど、驚いたという割には、落ち着いているようにしか見えなかった。
< 17 / 35 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop