ロマンスに、キス
ク
不味いミント味ののど飴が、残り3つになったころ。
昼休み、あたしはひとりで立ち入り禁止の非常階段に腰を下ろし、膝の上にお弁当を置いていた。
鉄の階段は冷たくて、少し錆びた匂いがする。ここは、誰にも見られない。だから、あたしには都合がよかった。
のど飴の袋は、カバンの中にある。
もう空っぽに近い、くしゃくしゃのビニール袋。
……なんとなく、捨てられずにいた。
全部、取ってある。食べ終わった後の、意味もない袋を。
自分でも気持ち悪いことをしている自覚は、ちゃんとある。
執念深くて、未練がましくて、みっともない。
この残り3つも、全部食べ終えてしまったら。
そのときは、佐野の連絡先を消そうと、勝手に決めている。
あのパンケーキの店で鉢合わせをしてから。
――いや、正確には、顔面に水をお見舞いしてやってから。
佐野とは、会う約束もしていない。
メッセージも送っていないし、送られてもいない。
通知が来るたびに、ほんの一瞬だけ期待してしまう癖も、もうやめたはずだった。画面を見て、違う名前だと分かった瞬間の、あの小さな落胆すら、無駄だと思っている。
あの日は、たまたま偶然だっただけ。
そう言い聞かせている。
なのに、飴が残り3つになったというのに、佐野の姿はずっと見かけていない。