ロマンスに、キス



もう、ずっと前から、あたしが、あたしじゃなくなってたみたいだった。


かわいくありたいのに。

かわいくないと、いけないのに。


なのに、感情は言うことを聞かなくて、計算も、余裕も、全部、ぐちゃぐちゃで。



ガリ、と。
口の中で、のど飴を噛み砕く。


ミントの味が、一気に濃くなって、舌がひりっとする。
苦くて、冷たくて、余計に、嫌な気分になる。



……優くんとは、もう会わないと思う。

いや、もう、会えない。


きっと、向こうから連絡が来ても、あたしは、前みたいに返せない。


優しかったし、条件だって、文句なかったし、誰がどう見ても、優良物件だったのに。


なのに。


「かわいいあたし」でいられるだけじゃ、

もう、足りなかった。


それに気づいてしまったことが、たぶん、一番、厄介だった。


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