ロマンスに、キス
「あたしのこと、誰だと思ってるの?」
睨みつけながら、見下ろす。
胸の奥では、怒りがどんどん熱を帯びて、抑え込んでいた感情が、膨らみ続けている。
――あたしを誰だと思ってる?
“天使”と呼ばれてきた、このあたしを。
冗談じゃない。
彼は「……あ」と、何かを思い出したみたいに小さく声を漏らし、そのままゆっくり立ち上がった。
立ち上がった瞬間、影が落ちる。
近くで見ると、思っていた以上に背が高い。180は余裕で超えている。
自然と見上げる形になるけれど、不思議と、負けた気はしなかった。
視線だけは、絶対に逸らさない。
「お前、この前男で遊んでたやつ?」
……一瞬、本気で聞き間違えたかと思った。
え、今、なんて?気づいてなかったの?あれだけ勝手なことをしておいて?
いや、それ以前に。
“男で遊んでたやつ”。
言い方が、あまりにも雑すぎる。人を人として見てない言葉。
しかも、あろうことか、あたしの顔の前で指を差してくる。
……指すな。
――人を指すなんて最低。
あたしを指すなんて、もっと最低。
「……その言い方、やめてくれる?」
声は、低く抑えた。震えないように、意識して。
彼は眉ひとつ動かさず、小さく首を傾ける。
まるで、「事実じゃね?」とでも言いたげな顔で。