【番外編追加】ロマンスに、キス
「佐野、かわいい?」
屋上のコンクリートの冷たさが背中にじわっと染みてる。
昼休みの風はぬるくて、目を閉じてると眠気が勝ちそうだったのに、影が落ちたと思った次の瞬間、視界がふさがれた。
ひとつに縛った髪が、俺の真上でぶらぶら揺れる。
わざとだろ、これ。
「……。」
目を開けると、一千華が逆さまに覗き込んでいた。
根元には、昨日見たのとは違うシュシュ。昨日はたしか水色だったのに、今日はグレーだ。
どうでもいいはずの違いを、覚えてる。
「おー。かわいい、かわいい」
「ほんとに思ってんの?」
「思ってるわ。だったら、毎日聞いてくんな」
昨日も、まったく同じやり取りをした。
違うのは、シュシュの色くらいだ。
一千華は俺の返事に納得したのかしてないのか分からない顔で、俺の横に座り込む。
「別に佐野にかわいいって言われたくてやってるわけじゃないし」
そう言いながら、膝を抱えてぶつぶつ独り言みたいに続ける。
嘘つけ。
俺がこの髪型好きだって言ったから、こうしてるの、ちゃんと知ってるし、そんなこと言っても無駄だからな。
ほんと、面倒なやつ。