【番外編追加】ロマンスに、キス
「佐野は、名前で呼ばれたいとかないの?」
唐突すぎて、一瞬、言葉の意味を飲み込めなかった。
「……別に、ねーな」
そんなこと考えたこともなかった。
名前で呼ばれるかどうかなんて、どうでもいい。
「呼んでみてもいい?」
「うん」
“うん”て。
無関心装ってるくせに、内側では違う。
胸の奥がじわっと熱くなって、落ち着かなくて、心臓が勝手に、うずうずする。
「朱李」
呼ばれた瞬間、時間が一拍遅れた気がした。
少しだけ恥ずかしそうに、チラッと横目でこっちを確認する一千華。
その仕草が、ずるいくらいにいじらしい。
……なんでそんな顔するんだよ。
ドッドッ、と耳の奥で音がする。
うるさいくらいに心臓が反応してて、この距離なら聞こえるんじゃないかって、本気で思った。
やばい。
これ、気づかれたら終わる。
かっこわる。
そんな自分が嫌で、俺は勢いよく起き上がった。
「……ふーん。悪くないんじゃね」
わざと素っ気なく、どうでもよさそうに。
本当は、もう一回呼ばれたいなんて、そんなこと思ってない顔を作る。