ロマンスに、キス



文化祭が終わって何日か経った昼休み。
階段を上がるたびに、空腹のせいでお腹がキュルキュル鳴りそうになって、恥ずかしくて余計に足早になる。

屋上の扉を開けた瞬間、少し生ぬるい風が頬を撫でて、余計に胃がきゅっと縮んだ。

また呼び出し。
しかも今日は、だらだら長く喋るタイプ。



「メイド姿の柏谷さん、ほんと可愛くて…それで、その……僕、あの時、ずっと見てて……」



知ってるし。視線刺さってたし。お腹空いたし。こいつ、話が長い。

言いたいことがあるなら早く言ってくれればいいのに、語尾がずっと濁ってて、昼休みが少しずつ削られていく。

お腹は鳴りそうで必死に堪えてるのに、告白未満の長話に付き合わされるこの状況。文化祭の余韻なんて、もうとっくに消えてる。



「そういうとこも、いいなと思ってて…その……優しい感じとか……」



これ以上聞いたら、本当に午後の授業に倒れるかもしれない。
背後の空気も気になる。屋上の奥、死角――。
そこに、佐野がいる。絶対。姿を見せてこないだけで、絶対いる。前もそうだった。あの気配は覚えた。


お願いだから出てこないで。


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