ロマンスに、キス
目を閉じて、呼吸もゆっくりで、さっきまでのキスの余韻のせいで、あたしは眠気なんて完全に吹き飛んでるのに。
心臓だけが、勝手に暴れてる。佐野の重みが、太ももにずっしり乗って、逃げ場をなくす。
「……あんた、ほんと勝手すぎ」
小さく呟いても、佐野は返事をしない。
「…なんで、あたしがあんたにこんなことしてるの?」
声がかすれる。不覚にも、逃げなかった。押しのけなかった。むしろ、心臓が跳ねた音を聞かれませんように、と願ってる。
おかしいのは絶対にこの状況のせいで、キスのせいで、佐野の頭の重さのせいだ。
……なのに。
膝の上の佐野は、あたしのそんな混乱なんて知らないみたいに、ただ気持ちよさそうに目を閉じている。
「嫌なら、どけろよ」
膝の上から、低い声がくぐもって聞こえる。
なんでそんな余裕なんだろう、この男は。
「…めんどくさいし、重いし、いい」
あたしは負けたように言ったけど、本当は“どける”って発想ができなかっただけだ。触れられてる場所の感覚が敏感になって、変に意識してしまっている。