ロマンスに、キス



佐野の映画のチョイスは――正直言って最高だ。
あたしと好みが完全に同じ。癪だけど、センスは認めざるを得ない。


今日の映画は、最初から最後までしっかり集中して見られた。たまに、少しだけ隣をチラッと見てみたりもするけれど、佐野は変わらず頬杖をつき、スクリーンだけを見つめている。横顔が暗くなったり、明るくなったり――光の加減で微妙に表情が変わるのが、なんだか面白い。


エンドロールまできっちり見る派の佐野。私もそう。最後まで席を立たずに見続ける。洋画だからか、エンドロールは異様に長く、途中でお客さんはほとんど帰ってしまった。
映画館を出るころには、あたしたちだけ。



「結構良かったな」

「うん」



なんて、それだけの言葉を交わす。

佐野がトイレに行くと言ってその場を離れ、あたしは壁際で携帯を触りながら待つ。指先だけを動かして、頭はぼんやり映画の余韻をなぞっていた。



「ひとり?」



――またか。
今日は、そんな気分じゃないんだけど。心の中でそう呟きながら、仕方なく顔をあげる。



「あれ? 柏谷?」

「……っ」



一瞬、息が止まった。


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