ロマンスに、キス
眉間にしわを寄せる佐野の表情が、だんだん険しくなっていくのが分かる。
目が鋭くなって、あたしをにらんでいる。
嫌い。
大嫌い、佐野。
「お前が俺に話さないからだろーが。話したくない奴に無理やり聞き出したりしねーよ」
「…っ、ち、がう」
ねえ、違うでしょ、佐野。
「はっきり言えよ」
そう言われた瞬間、頭の中で何かが切れた。
胸の奥のもやもやが、一気に爆発した。
目の前にあったコップの水を、無意識に佐野の顔めがけてかけてしまった。
「…っ、は?」
びしょ濡れになって、驚きを隠せない佐野。
「どうせ、佐野だってさっきのやつと同じだよ…!あたしのことなんて興味ないし、知ろうともしてくれないし!大っ嫌い! もう、顔も見たくない!」
人の多い店内で、やってはいけないことだと頭ではわかっている。むしろ、水をかけるなんて、店でなくても絶対やっちゃいけないことだ。
でも、もう耐えられなかった。
胸の奥の怒り、悲しみ、もどかしさ、すべてがぐちゃぐちゃになって、止めることができなかった。
カバンを握りしめ、急いで店の出口へ駆け出す。
足取りは乱れ、心臓はバクバクと胸を打つ。
背後で、佐野の声が追いかけてくる気配もしたけれど、聞こえないふりをした。