ロマンスに、キス



帰り道、駅で佐野の姿を見かけることもなく、電車に揺られながらぼーっと座っている。
胸の奥にぽっかりと穴が開いたような、虚しい気持ち。

なんで、素直になれないんだろう。


家の最寄り駅について、なんとなくコンビニに立ち寄る。
目に留まったのは、飴のコーナー。


あのミントののど飴。


コンビニ限定、と書いてあった。
だから、見かけなかったんだ。

…あたし、まだこれ、食べてないんだよね。


胸の奥がギュッと締めつけられて、ポロポロと涙があふれだす。
止まらない。
最悪だ、ほんとに。


店員さんに「体調悪い?大丈夫?」と心配されたけれど、それでも涙は止まらなかった。

佐野にもらった飴はまだ残っているのに、まだ味わっていないのに、馬鹿みたいに手に取って、レジに持っていく。


コンビニを出ると、また涙が溢れて止まらない。
冷たい夜風が頬を撫でるたびに、鼻の奥がツンと痛む。


帰り道、買った飴を舐めてみたけど、やっぱり思った通り、不味かった。


< 91 / 113 >

この作品をシェア

pagetop